2018年8月1日、スターマリアナ航空の小型機(8人乗り)に乗って、グアム空港経由でロタ島へ入りました。到着後、空港へ出迎えに来ていたデビット(ロタ政府のコーヒー農園復活プロェクト担当部署DLNRのボス)と一緒に新たに発見されたマウンテンコーヒー群生地のひとつであるIsang地区へ直行しました。
ロタ島訪問の目的は6月中頃にサバナ山(標高500m)の標高400m地帯の深いジャングルで発見された2か所のマウンテンコーヒー群生地のチェックです。現在、ロタにあるコーヒーは大航海時代末期の約250年前にスペイン人の手によって植えられ、今日まで人知れずジャングルの奥地で生き延びてきたという神秘的なストーリーを持つコーヒーです。まさに、世紀の大発見です。
運悪く、ロタ滞在中はずっと大雨、でも、時間に余裕がないので、予定通り、翌朝にロタ市庁舎を訪れて、アタリック市長に挨拶をし、 その後直ちに、担当部署DLNRのスタッフ達と一緒に新しく発見されたもう一つのマウンテンコーヒー群生地As Akoddo地区へ。
途中までは4輪駆動のピックアップトラックで行けますが、そこから奥は狭いジャングル道です。久しく人が分け入っていないことが納得できます。今回の我々の訪問に合わせて木や草を切って、即席の道が造ってありました。しかし、大雨の中、歩くのは厳しいものがありました。雨水が山道を川の様に流れ、靴の中までビチャビチャです。途中に実を付けたカカオやアドカドの木があちこちにたくさん見受けられました。
20分ほど歩いて、ようやくその場所に辿り着きました。確かに群生地です。野生ですからまっすぐに天に向かって伸びている木はありません。 くねくね曲がっていたり、重なり合ったりしています。でも、青い実をたくさん付けています。ちょっと手を入れて、ブッシュを取り除いたりして、風通しや、太陽の光を調整すれば、もっと実を付けるのでは、と思いました。因みに、ロタ島にはヘビなどの危険な動物は生息していません。
雨は止む気配がないので、しばらく居て、次に一緒に来たスタッフが所有しているシナパロ地区のファーム(農場)を見学に行きました。そこには自分が飲むために数本のコーヒー木が栽培されています。 標高は約200mです。適度な影があって、風通しが良いので、マウンテンのモノよりたわわに実を付けていました。もちろん、 どちらも約250年間の長きに亘ってオーガニックです。
このように時間をかけて調査していくと、ロタ島は相当の広範囲でコーヒーを栽培できるのではないかと感じてきました。現地スタッフ達も 同様に感じ始めている様子です。ロタ経済復活の起爆剤にできそうです。
帰国後、8月22日にこのプロジェクトを応援するためにクラウドファンディングを立ち上げました。以下はその動画です
支援者は48名で、実質支援金額は 2,802,080円(額面支援金3,376,000円の内、手数料17%差し引き)でした。
支援者は我がKFCメンバーはもちろん、昨年の欧州自転車ツーリング第4弾に行った仲間たち、過去にロタブルートライアスロンに参加して下さった選手の皆さん、 ダイビングや旅行でロタ島を訪問された方々でした。支援者の皆さん、金銭的なリターンは全然期待できないと承知の上でのご支援です。ありがとうございました。
また、クラウドファンディング終了後に支援者2名で、1,300,000円もの支援金を頂きました。ありがとうございました。
尚、クラウドファンディングの詳細は【こちら】をご覧ください。
翌8月23日、DLNR署長デビットから重機でブッシュを切り開いている写真が届きました。サバナ高原(標高500m)にある政府保有の広大な土地の一部にコーヒーを試験栽培をする農園を造成している風景だそうです。苗木はロタのマウンテンコーヒー豆から育てたものを移植するそうです。
このエリアにはコーヒーとカカオを一緒に植えると云います。理由は、直射日光を嫌うコーヒーのためにカカオの木が日陰を作るからです。ロタのジャングルにはコーヒー木と同じ場所にカカオもたくさん自生しています。カカオとコーヒーは生育する環境がよく似ているので 一緒に育てることが容易だそうです。
9月27日、「IRONMAN 70.3 SAIPAN」(10月27日開催)の準備でサイパンへ来ている時でした。ロタ島のDLNRから脱穀し、乾燥させたコーヒー豆が大西の元へ届けられました。これらは日本へ持ち帰ってUCC上島珈琲(株)に品質検査してもらうためのサンプルです。
コーヒーは我々素人が思っている以上に赤く熟するまで時間がかかるもので、6月に青い実を確認して、9月に入ってようやく赤くなり始めたと云うことです。
実は、7月始めにUCC上島珈琲(株)を訪ね、ロタコーヒープロジェクトの経緯と進捗状況を説明し、コーヒー栽培から焙煎、商品化に至るまでの技術協力をお願いしました。
なぜなら、ロタのコーヒーは 島民が栽培したものではなく、大航海時代末期にスペイン人が持ち込んだもので、それが野生化し、今日まで250年間ジャングルの中でひっそりと生き延びてきたものです。だから、島民にはコーヒーに関する知識や技術が全くないからです。そして、このプロジェクトにとって早急に必要なのは栽培に関する農業知識だからです。そして、有難いことに快諾して頂きました。
さらに、ハワイ島コナにあるUCCコナコーヒー農園で収穫時期の10月上旬に3日間に亘って「ロタコーヒー農園復活プロェクト」の 中心人物3人(ロタ政府職員)が研修や見学をさせて頂くことになりました。これは彼らにとってはこの上ない素晴らしい経験になると思っています。この件に関してもUCC上島珈琲(株)のご好意には大感謝です。
結局、パソコンワークに強いスタッフはケガで参加できず、ハワイ研修に行ったのはDLNRのボスであるデビット・カルボと現場作業に精通したデビット・メンディオラの2人でした。
そして、10月中旬、ハワイ島のUCCコナコーヒー農園の研修を終えて、ロタへ戻ったデビット・カルボから以下のような感謝の興奮メールが届きました。
Aloha and Hafa Adai Onishi san,
First of all, we would like to thank you you and the KFC Triathlon Club for giving us the opportunity to visit and learn about coffee processing in UCC Hawaii Kona Coffee Estate. It's been an educational experience for us to bring back home and share the knowledge with our future Rota coffee Farmers here in the beautiful Nature's Treasure island Rota.
With that said, we would also like to give thanks to Mr. Nakahira San and Mr. Jon Kunitake their staff for taking their time to teach us how to pick and process mature coffee beans and also touring us around their Kona Coffee Estate. It's an experience of a life time.
Please view attach photos of me and Mr. David Mendiola while we on training at the UCC Hawaii kona coffee Estate.
Best Regard
David san
ハワイのコナコーヒー農園では、コーヒー豆の収穫のやり方、脱穀の仕方、乾燥の方法、そして、焙煎等々、一連の作業行程を全部体験させてもらって、全く知識のなかったデビット達にとっては、この上なく良い経験になったようです。この経験は将来のロタ島のコーヒー栽培において、何物にも代えがたい貴重な宝物になると確信します。
コーヒー農園での収穫作業にご多忙の中、デビットたちの面倒を見て下さった上島珈琲(株)本社の中平さん、UCCコナコーヒー農園のジョンさん、その他のスタッフの皆さんに大感謝です。
今回のロタ島からハワイ島コナへの研修費用のすべては我がKFCメンバーの峰尾さんからの支援によるものです。
昨年6月開催の「第8回TOKYO成木の森トレイルラン大会」が終わっての帰り際、峰尾さんがすっと大西に近づいて来て、「私、銀行にドル預金持っているので、1万ドル(約100万円)をロタコーヒープロジェクトに寄付したい。」と申し出てくれました。「何で日本国内で米ドルなんかを持っているの!?」「リターンなど全く期待できないのに・・、有難いけど、もっと少なくていいよ。」暫し、皆でワイワイガヤガヤ・・・。結局、有難く寄付してもらうことになりました。そして、上の写真はそのお金(1万ドル)をロタ訪問時にでデビットたちに手渡した時の様子です。デビットたちの満面の笑みが全てを物語っています。
因みに、峰尾さんとは25年間ほどの付き合いになります。それにしても、雑多集団のKFCにはすごい人がいるものだ、我がチームながら改めて思いました。そして、これはクラウドファンディングを始める前の出来事です。さらに、クラウドファンディングにも、そして、クラウドファンディングが予想以上に支援金を集めることができなかったので、その終了後にも個人的に支援をしてくれました。このプロジェクト最大の救世主です。峰尾さんの強力な支援がなければ、こんなにスムーズに、ここまで辿り着くことができなかったと思います。大感謝です。
11月、UCCからロタコーヒー豆サンプルの品質検査の報告書が届きました。一言で言うと、「現状では難有り、しかしながら、今後の対策次第では有望」と言うことです。
アドバイスとしては、収穫時に真っ赤に熟した実を収穫すること、収穫後に皮をきれいに取り除くこと、乾燥前と乾燥後に豆の選別をして、良くない豆を取り除くこと等々の作業をしっかりやらないといけないと云うことでした。現状ではそれができていないということです。すなわち、収穫から脱穀、そして乾燥までの作業が雑だったということです。
現在は脱穀等々の機械が何もないため、手作業でやったのが原因かもしれません。それにしても、全くの技術不足です。これらの農業技術が確立されれば、美味しいコーヒーができるということです。豆自体が悪い訳ではありませんので、一安心です。
そして、今年(2019年)の収穫時(秋頃)には日本のUCC上島珈琲(株)から技術スタッフが来島され、ロタコーヒーの視察や今後に向けたアドバイスをして頂けることになっています。そこからが本格的なスタートになると思っています。
UCCから届いた品質検査報告書は【こちら】をご覧ください。
当初は簡単と思っていましたが、そうは問屋が卸しませんでした。まだまだ先は長そうです。現在、世界経済を席巻してるGAFAのように一人の天才がいれば、ことが足り、すぐに結果が出るIT産業界と違い、農業は地味でスローです。しかし、何物にも代え難い価値ある仕事と思っています。近い将来、大航海時代の置き土産であるマウンテンコーヒーが長引く経済不況に喘ぐロタ島民の救世主になることを願っています。
2019/01/15 KFC記