イベント報告
欧州自転車ツーリング第4弾2018
2018年6月5日(火)〜14日(木)
南仏プロヴァンス--小さな村と〜モンバントゥーの10日間
【KFC徒然】

「欧州自転車ツーリング」とは本場ヨーロッパの自転車文化に直に触れたくて、また、日本の自転車乗りの皆さんへそれらを紹介したくて、 我々KFCが2011年から2年に一度実施している欧州イベントだ。

今年は第4回目で、南仏プロヴァンス地方にあるラベンダー畑で有名なソー(Sault)村とモンヴァントゥ(ヴァントゥ―山)の麓の 村ヴェゾン・ラ・ロメーヌ(Vaison La Romaine)の 2か所にある小さなホテルを起点として、その田園地帯のツーリング(サポートカー付き)を楽しむ。

そして、最大の目的は自転車乗りなら誰もが知っているあの「ツール・ド・フランス」の山岳ステージで有名なモンヴァントゥにアタックするというもの。 もちろん、山歩き、街歩き、観光も含む。

■6月5日(火)【マルセイユ到着】

午後11時頃、南フランスの玄関口であるマルセイユ・プロヴァンス空港へ到着した。気になっていた自転車も8台とも無事に全部受け取ることができた。 前回のことがあるので、やれやれだ。前回はトランジットのアムステルダム空港に留まって、マルセイユ空港に届かなったのだ。

そして、前回も参加した岩崎さんが設計製作したスケルトンでコンパクト、スマートな人目を引くバイクケース「Z-UP IMPACT」で5台を持って来たのも、功を奏したのかもしれない。 出発時の羽田空港チェクインカウンターでもスタッフや周囲の人から注目を集めたほどだ。

マルセイユ空港内の到着ロビーで、友人でもあり、現地ツアーコーディネーターでもある石井さんが出迎えてくれた。石井さんはマルセイユ在住。 これから帰国までずっと石井さんにアテンドしてもらう。石井さんに案内されて、空港のすぐ向かいにあるビジネスホテル「ベストウェスタン」へ入った。

石井さんは出発の半年ほど前から大西とやり取りしながら、大西の希望に沿って、自転車ツーリングに適したルートや宿泊地を詰めていってくれる。 実際に時間と労力をかけて、現地の村へ足を運んで調査したり、何本かのルート試走をしたり、ルート上にある効率の良い昼飯処(レストラン)や 観光スポットも調べてくれる。丁寧な仕事ぶり、信頼できるパートナーだ。石井さんなくしては、このツアーは成り立たない。

■6月6日(水)【ラベンダー世界最大の生産地ソー村到着】

今回のツアーは、あの「ツール・ド・フランス」の山岳ステージとして有名なモンヴァントゥ―(ヴァントゥ―山/標高1912m )を挟んで、 西側にあるソー村で4日間、その後の5日間は東側にあるヴェゾン・ラ・ロメーヌ村に滞在することにしていた。

初めての訪問となるソー村はラベンダーの世界最大の生産地として有名な村だ。そして、後半のヴェゾン村はお気に入りの ホテル“Le Logis du chateau”があるので、今年で3度目の訪問となる。このホテルは村を見下ろす高台にあり、ツール開催時には、 参加チームの定宿となることで有名だ。因みに、ヴェゾン村は古代ローマ時代の歴史地区を多く残す村で、プロヴァンスでは人気の観光地だ。

朝起きて、8時からゆっくり朝食を摂った。南フランスのホテル朝食はどこも皆同じだ。シンプルだが美味しい。特に、パンやバターやチーズの 乳製品が美味い。ブッフェスタイルで、クロワッサンやフランスパン等々、ハム類、チーズ類、ゆで卵、ヨーグルト、フルーツ、ミルク、ジュースと 云ったメニューだ。ヨーロッパではコーヒーの基本はエスプレッソだ。と云うか、どこのカフェやレストランもエスプレッソマシンしかない。だから、 日本で云うアメリカンはエスプレッソを湯で薄めるだけだ。

10時にマルセイユから前半の宿泊地であるソー村へ向けて出発した。我々は9人だが、8個のバイクケースがあるので、大型バスをチャーターした。 60〜70人乗りに9人とは贅沢だが、これが最も効率が良い。所要時間は2時間半ほどだ。

昼過ぎにソー村のホテル“Signoret”へ到着した。民家を改造しようなこじんまりしたホテルだ。ソー村は広大なラベンダー畑を見下ろす高台にあり、石造りの洒落た小さな村だ。 どこを切り取っても絵になる村だ。そして、村の周囲には広大なラベンダー畑が広がっている。さすがラベンダーの一大産地だ。しかし、 残念ながら未だ花は咲いていない。一部の畑を除いて、うっすらと紫色で、一分咲きと云ったところだ。それでも、その畑からはよい香が漂ってくる。おそらく ラベンダーの香りだ。

先ずは腹ごしらえ、村内のレストランでランチにピザを食べた。ピザは待ち時間が少なくていい。そして、すぐに自転車を組み立てた。未だ午後3時だったので、脚ならしに 60qほどのツーリングに出かけることにした。この時季の南フランスは午後9時半頃まで明るいので、自転車にとっては安心だ。

毎回参加のエース坂村くんを先導にトレインらしきものを組む。任せて安心、頼りになる男だ。しんがりは今年も大西の定位置。ルートは大峡谷に沿って30qほど南下して、戻って来るという周回ルートだ。この辺りは石灰岩の地殻変動によって形づくられた地形なので、 眼下に広がる深い峡谷はダイナミックで圧巻の景色だ。

ソー村からは気持ちよく下りベースでツーリングを開始、でも、運悪く、30qほど走った地点で大西のイエロートンプソンがパンクしてしまった。ところが、 スペアタイヤ(チューブラー)をホテルに置いたまま。不覚だった!借りるにも、チューブラー派は大西だけだったのも運がない。

その時、峰尾さん(女性)が伴走車に乗ると云うので、そのバイクを借りて、上りの約30qを乗った。20p以上身長が違うでの三輪車の様、 でも、ゆっくりならば、走れる。やればできるものだ。峰尾さんのお陰で、太ももは疲れたが、自転車の乗ることができた。ホテルのあるソー村近くに戻った所で、 少し雨にやられた。

そんなこんなで予定よりずっと遅れて、7時半過ぎにソー村のホテルにたどり着いた。この日の夕食はホテルのレストランで摂った。でも、 外はまだまだ明るい。おかしな気分だ。

6月7日(木)【広大なラベンダー畑を行く】

この日はソー村から北東方向への山越えで走行距離70qのルート。広大なラベンダー畑が圧巻だった。開花前で、一面の緑色だが、 その広大さは圧巻だ。よい香が漂ってくる。さすが香の花ラベンダーだ。

ツーリングの途中、観光のため小さな村に立ち寄った。そしたら、宿泊ホテルが同じで顔見知りの自転車乗りの一団とばったり出会った。何でも、 ニュージーランドからツーリングに来ているという。別のグループはイギリスからと云う。目的が同じだから打ち解け合うのも早い。 一緒に集合写真を撮った。また、彼らは岩崎さんの作ったバイクケースに大変興味を持っていた。ホテルのガレージでそれらを見たという。

その直後、ルート上にある広大なラベンダー畑に囲まれた村のレストランでランチにした。南仏の田園風景に溶け込んだお洒落なレストランだ。

そして、ラッキーなことにそのレストランの前の畑は紫色だ。満開ではないが、ラベンダーが少し開花しているのだ。その畑が見渡せる前庭の オープンテラスに席を陣取った。すぐに食べられるピザをオーダーした。飲み物はビールとスパークリングウォーターのペリエだ。 メンバー構成はアルコール組とノンアルコール組が半々と云う構成だ。そして、この後のツーリングは雨にやられることとなった

6月8日(金)【自転車天国のような道】

この日はソー村から北西方向のルートのツーリングだ。距離は約80q。この日もアップダウンはそれなりにある。この辺りは平地が少なく、 山に囲まれてた地形なので、どこへ行くにも山越えは必須だ。

でも、車はほとんどなく、信号もなく、景色はよく、道も良いので、自転車には最高の地だ。それに古くから自転車文化が根付いており、 地域の人たちも、車も自転車をリスペクトしてくれる。車の幅寄せなど決してない。自転車が通過するまで、或いは、安全にパスできる場所まで、 辛抱強く待ってくれる。

この日のランチもルート上にある小さなレストランで摂った。メニューはすぐに食べられるハンバーガー、野菜サラダ等々をオーダーした。 皆の飲み物は自家製ビールとペリエ。

この辺りのレストランは自家製のビールやワインを造っている所が多い。それを味わうのも皆の楽しみの一つだ。 でも、大西はいつも炭酸水だ。

午後から突然雲行きが怪しくなってきた。急いで先に進もうとしたら、予定のルートがその日から工事で通行止め。う回路がないので、急いで、 来た道を引き返すことに。

ところが、運悪く、峠の上で坂本さんの自転車の後輪がパンク、雨も降ってきた。道路脇にワゴン車を停めてチューブ交換、 でも、なぜか上手く行かない。3本もチューブをダメにしてしまった。その間、1時間ほどを要してしまったが、結局、ワゴンに積んで帰ることに。そして、ホテルの近くにあるバイクショップで修理してもらった。

また、我々が道路脇で修理していると、他国から走りに来てる自転車乗りが立ち寄って来て、空気入れを貸したり、彼らが自分たちのバイク修理を始めたり・・等々。 言葉は分からなくても、自転車乗り同士、お互いにコミュニケーションができるから不思議だ。

■6月9日(土)【ソー村からヴェゾン村へ移動】

この日はソー村から後半の滞在地ヴェゾン・ラ・ロメーヌ村への移動だ。位置的にヴェゾン村はモンヴァントゥ―の西側にあるので、 東側のソー村からモンヴァントゥ―山頂を越えての移動だ。距離は約60q。いつも通り、8時にホテルで朝食を摂って、9時半頃からの出発だ。 ルート詳細は【こちら】

せっかくソー村へ来たのだからと云うことで、アタックの前に村のはずれにあるラベンダー農家に立ち寄った。農家と云っても、 石造りの建物で周囲にはラベンダーやオリーブの木が植えてあって、お洒落だ。絵になる。ラベンダーオイルの精製方法を見学したり、 石鹸やオイルのお土産を買ったりした。

ソー村からモンヴァントゥ―山頂へ行くルートは初めてだ。モンヴァントゥ―山頂へのアタックルートは3本あって、その中でもソー村からのルートは 25qと距離は長いが、勾配が少なく、いちばん楽と聞いていた。楽しみだ。初めての道はワクワクする。天気は良いし、気分は最高だ。

皆もモンヴァントゥーへ上る日は気持ちが高揚しているようだ。南仏で標高が一番高いこの山(標高1912m)はプロヴァンスの巨人とか魔の山と畏怖され、 自転車乗り以外にも一目を置かれているインパクトのある山だ。 そして、この時点では、 この後に思いもよらぬ不幸が大西に降りかかることなど知る由もなかった。

午前10時半頃、エースの坂村くんを先頭に8人が皆思い思いのペースでアタックルートを登り始めた。しんがりは大西の定位置だ。 トラブル対策として、先導の坂村くんと最後尾の大西、それに伴走車は無線機を携帯して、必要に応じて連絡を取り合う。この規模のツアーでは 無線機は必須アテムで非常に役に立つ。ロスト(ミスコース)やパンク等々の対応が素早くでき、気持ちに余裕が生まれるのがいい。

午後1時頃に全員が山頂から約5km下のカフェレストラン“Le Chalet Reynard(シャレ・レナード)”に到着した。世界中からたくさんの自転車乗りが集まっていた。 そして、飲んだり食べたりして、一服していた。天気が良いので、屋外のテラス席も満席状態だ。

我々もサンドイッチとフライドポテト、そして、 コーラでランチにした。特に、フライドポテトは肉厚でジャガイモの味がしっかり残っていて美味かった。

ここまでのルートは予想以上に楽だった。斜度10%を超える所はなかった。エース坂村くんはアウターでも余裕があったようだ。そして、 他国からの自転車乗りとの坂道バトルを楽しんだようだ。

でも、ここから先、山頂まではイージーではない。それなりにタフなルートだ。 樹木が一本もない真っ白な山肌に、山頂のテレビ塔へと続く道が一本あるだけと云うシンプルなルートだ。「ツール・ド・フランス」で度々映る映像だ。 世界で最も有名なサイクリングルートと言っても過言でないだろう。

ここで特筆すべきは、我がKFCの峰尾洋子さんの驚異的な元気体力だ。71歳でこのモンヴァントゥ―を軽々と上ってしまう。 前々回の第2弾に続いて2度目のアタックだ。思うに、この元気の源は、何事に対しても、ポヂィテブで陽気で明るい性格だ。 知り合った25年前と何ら変わらない体形、スーパーウーマンだ!

テレビ塔がある山頂広場に到着。山頂の狭い広場はカラフルなウェアの自転車乗りでいっぱいだ。土産物店や屋台も出て、ちょっとした縁日のようだ。 そして、皆、憧れのモンヴァントゥ―山頂に上ったという達成感で興奮状態にあった。皆一様に記念写真を撮っている。我々も同じだ。

山頂広場は、天気が良いと云っても、標高が1912mもあるので、汗が引くと寒い。それにやや空気の薄さも感じる。 そのため、暫しの休息後、3時頃からヴェゾン村に向かう反対側のルートを下り始めた。距離にして約30qの長い下りだ。下り番長を自認する岩崎さんはカッ飛んで行く。 メチャクチャ速い。誰も付いて行けない。

しかし、大西の愛車イエロートンプソンは山頂から僅か50mほど下った所で後輪辺りから異音と振動を発した。不吉な予感。停めてチェックしたが、 外観に異常は見られない。再度、下り始めると、やはり背後に草刈り機のような大きな異音と振動。でも、麓のマロセーヌ村まで下りないと何もできない。 時速20qくらいで騙しだましゆっくりと下った。坂本さんと坂村くんが心配して後ろについてくれた。この時も無線機は役に立った。

マロセーヌ村は我々のように海外や遠方からの自転車乗りが多く集まる村だ。だから、この時季はたくさんの自転車乗りでにぎわっている。 ホテルやレストランやカフェ、それにバイクショップも数軒ある

マロセーヌ村に辿り着くや否や、大西は速攻で目の前のバイクショップへ飛び込んで修理を頼んだ。そこの店員に状況を説明すると、 即、後輪のハブだと断言した。2日間預かるから月曜日の午後4時過ぎに来いと云う。と云うことは2日間も自転車に乗れないと云うことだ。 一寸先は闇、ガッカリだ

因みに、この辺のやり取りは石井さんにフランス語で通訳してもらった。フランスでは田舎に来るとフランス語しか通じない。

そして、5時半頃、ヴェゾン村にあるお気に入りのホテル“ロ・ジ・ドゥ・シャトー”に到着した。ここの泊まるのは3度目だ。勝手知ったるホテルだ。

■6月10日(日)【モンヴァントゥ―アタック】

この日はモンヴァントゥ―・アタックの前線基地であるべドアン(Bedoin)村からの最も人気のあるアタックルートだ。走行距離は約70q。ルート詳細は【こちら】

この日の天候は一日中晴れだ。モンヴァントゥ―は標高が高いので、アタックの日は天候が悪いと危険だ。当初の予定では翌日の11日だったが、芳川さんが天気予報をチェックしてくれ、 確実に晴れとなっている10日に変更した。2日連チャンのモンヴァントゥ―アタックは脚にキツイかも。でも、天候が最優先だ。

大西は芳川(女性)さんの自転車を借りることになった。 芳川さんは伴走車に。身長が違うので、岩崎さんにサドルを15pほど上げてもらった。

9時半頃にホテルを出発した。小さな丘を一つ越えてモンヴァントゥ―・アタックの前線基地べドアン村に着いた。この村もマロセーヌ村と同様に遠方からのたくさんの自転車乗りが 集まる村で、お土産店やバイクショップが充実している。

ここで買い物に1時間ほど時間を割くことにした。大西は7月29日開催の「第10回東京ヒルクライムOKUTAMAステージ」用に、ここでしか買えない モンヴァントゥ―が描かれたレアものの男女バイクジャージ(上下セット)を購入した。レース後の表彰式でのジャンケン大会用だ。

11時、べドアン村スタートでアタックを開始した。距離は約20qで昨日より5km短い。一本道だから皆それぞれのペースで行くことにし、 15q先のカフェレストラン“Le Chalet Reynard(シャレ・レナード)”で全員集合することにした。伴走のワゴン車は後から出発して、適当に皆の様子を見ながら 動いてもらうことにした。この日のワゴン車にはドライバーの石井さんの外、市川さん、峰尾さん(女性)、芳川さん(女性)が乗っている。

スタートから2kmほどは平坦なぶどう畑の中を行く。その後、徐々に斜度は上がり、最後の民家を過ぎる辺りから一気に斜度13%へと上がる。 そこからは樹木に囲まれた坂道だ。その後、斜度10%〜13%の上りが延々と続く。休める場所はない。先のことを考え、ギヤを一番軽くする。 ここからが忍耐の始まりだ。

しかし、すでに坂村くん、サイパンだの島田さん、坂本さんの3人は先行してしまっていた。因みに、島田さんは“サイパンだ”リュックを背負って、 欧州、米国、中国等々、世界各地を旅している。サイパンの観光大使をお願いしたいと思っている。

大西は時速10qを切っている。フレームが小さいので、ケツ筋が使えず、出足から太ももに疲労が集中して、乳酸でパンパン、動かない。この日の本番ルートだけは 自分のジャストフィットのイエロートンプソンで行きたかった・・。

身体のデカい外国人がシャカシャカと抜いていく。おそらく時速12〜13qくらいかも。電動バイクもニコニコしながら抜いていく。片や、 道端に停まって休んでいる人もいる。皆、それぞれ自分のペースで、自分のモンヴァントゥ―アタックを楽しんでいるのだ。

因みに、 ツールの選手たちはこの坂を時速20q〜30qで駆け上がって行くのだ。信じられない。

10qほど上った所で、ワゴン車の無線機マン市川さんへ水を要求した。500mlがなくなったのだ。本番のこの日は近藤さん(女性)に 自転車を貸して、いつの間にかちゃっかり伴走車に乗っている。無線機を持たすとよくしゃべる市川幸次。皆の笑いを誘う。

ワゴン車の待機場に辿り着くと、島田さんと坂本さんがいた。いつも力強い島田さんが珍しく体調が悪そうだった。

この後、しばらくして昨年の 「ツール・ド・フランス」でフルームがバイクを放り出して走った地点に差し掛かった。ここを過ぎると間もなく集合地点のカフェレストランだ。

少し遅れて、初心者の近藤さんと伴走役の岩崎さんが続く。近藤さんは過去に自転車経験はなく、このツアーに参加するために日本で数時間の 即席練習をしただけのズブの素人だ。未だ自分の自転車もない。

でも、プロヴァンスへ着いてから市川さん、峰尾さん、芳川さんたちの小さいフレームのバイクを借りては、毎日のように40〜50q乗っている。 もちろん、ランシューだ。

それでも、それなりの長い坂道も皆と同じように上ることができる。これには皆がびっくり。職業柄、心肺機能が優れ、 身体や筋肉の使い方が身についているのだろう。職業はピラティスやヨガのイントラだ。

午後1時頃には全員が集合地点のカフェレストランへ到着した。直後に、ここで飲むコーラは格別だ。この日も天気が良いので大勢の自転車乗りが 陣取って、飲み食い、雑談をしていた。

地元だけでなく、ヨーロッパを始め、世界中からやってきている。何と、この日はドイツからは500人もの 団体が来ていると云う。でも、今回も見渡す限り東洋人は我々だけ。ある意味、日本代表と云ったところだ。中には日本人と分かり「コニチワ〜〜!」と声を掛けてくれる外国人もいた。

時間的に余裕がなかったので、昨日と同じメニューで腹ごしらえをして、山頂のテレビ塔をめざし、残りの約5kmを上り始めた。 坂村くんは余力があるので、ぐんぐん上って行く。他のものは相当に脚に来ている様子だ。

2日連チャンでのモンバントゥ―アタックは辛いものがある。ケツ筋の使えない大西は太ももがパンパンで動かない。それでも、何とか皆山頂に 辿り着いた。自転車を貸してくれた芳川さんに感謝だ。この日も、その狭い山頂広場は大勢の自転車乗りでいっぱいだった。

国籍や人種は違えども、同じ自転車乗り、憧れのモンヴァントゥ―に来ていると云うことで、強い仲間意識を感じる。気軽に挨拶したり、 言葉を交わしたり、 助け合ったり、拍手で応援したりで、アゥエー感は全くない。皆お互いをリスペクトしているのを感じた。

■6月11日(月)【岩山へトレッキング】

この日の朝もヴェゾン村の旧市街を見下ろすホテルの中庭に皆集まって、近藤さんによる朝ピラティスをやってもらった。昨日の山頂アタックで 疲労した身体のケアをし、その後、ゆっくり朝食を摂った。朝の澄んだ空気が気持ちよかった。

この日は気分を変えて、自転車には乗らず、滞在しているヴェゾン村から車で30分ほどの所にあるジゴンダス村へ行き、そこにある有名な 岩山Dentelles山へトレッキングに出かけた。

南仏プロヴァンス名物の石灰岩(カルキ)の隆起した岩山だ。 標高は730m。政府公認のトレッキングルートが何本もあって、我々は時間的な 見地から10qのルートを選択した。山頂付近からは眼下に広大なぶどう畑が見渡せ、ブドウの木の緑が無数の線となって整然と並んでいた。圧巻だ。

そして、山頂付近では、紫色の濃い野生のラベンダーが咲いているのを発見! プロヴァンス感を改めて感じた。南仏は自転車も良いけど、 トレッキングやトレランも楽しいだろうなと感じた。

夕方4時にマロセーヌ村のバイクショップへ大西のイエロートンプソンを引き取りに行った。

フランスだから約束の4時には仕上がっていないだろうな、 と思いながら店に入ると、何と修理はすでに終わっていた。後輪ハブのオーバーホールだ。修理費を尋ねると、25ユーロ(約3000円)と云う。 余りの安さに再度尋ねたが、やはり25ユーロ。200〜300ユーロは覚悟していた。フランスはバイクショップも自転車乗りには優しいようだ。

この日の夕食はヴェゾン村にある古城へと続く旧市街の高級レストランで摂った。旧市街を見下ろす高台という最高の立地にある。 古代ローマ時代に造られた石造りの建物をレストランに したものだ。おそらく貴族の館だったのだろう。前回に訪れて、たいへん気に入ったので、今回も希望したものだ。本場フランスの本物のフランス料理だ。

■6月12日(火)【ツーリングとオリーブ農家】

この日の午前中は、広大なぶどう畑の中をツーリング。途中で、石造りの小さな村に立ち寄ったり、オリーブ農家を訪ねたりした。 フラットなイージーコースで距離は約50q。

そのオリーブ農家の主人からオリーブオイルに関して、面白い話を聞いた。同じオリーブの木でも収穫の時期によって味と色が全然違うことや、 標高の違いでも味が違うそうだ。試食させてもらったところ、スーパーで売っているものとは味が全然違った。美味い! 即、 お土産用に500lm缶を1ダース購入した。その容器は瓶ではなく、缶で、瓶よりも缶の方が長時間美味しさを保てるそうだ

昼にホテルに戻って、全員ワゴン車で、トリュフ農家を訪ね、トリュフ狩りを体験し、その後、グルニャン村にある有名なお城へ観光に行くことにした。

トリュフの旬は冬だが、この辺りには夏でも収穫できるトリュフ園があると云う。トリュフはドングリの林に育つという。土中にあるので、 見るけるのは鼻の効く犬だ。それでも見つけるのは難しいのだろうなと持っていたところ、数分で小石大のものを2個も、あっさり見つけてしました。意外! そして、それを園内の建物で試食させてもらった。初めて体験した香だった。

その後、この辺りでは最大の城であるグルニャン城へ向かった。街中に車を停めて、徒歩で見学した。展望台広場を持つ立派な石の城だ。 その広場からは眼下に石造りの街の全景や広大なぶどう畑が見渡せた。

そうこうしている内に雲行きが怪しくなってきたので、急いで帰途に就いた。その途端、バケツをひっくり返したような豪雨に見舞われた。 間一髪セーフ。大粒の雨、道路が川のようだ。この時、この豪雨が我々に直接ダメージを与えているとは、夢想だにしなかった。

■6月13日(水)【帰国日のハプニング】

この日はフランス最後の日。午後3時半に迎えのバスがホテルまで来てくれ、マルセイユ空港へ送ってくれる手配だ。午前中にバイクの梱包を終えて、 ヴェゾン村の旧市街地の街歩きを予定していた。

朝食を終えて、バイクの保管庫に行ってみると、昨夕の豪雨で裏山から鉄砲水が保管庫に流入し、床を濡れていたのだ。坂本さん自作の段ボール製 バイクケースの底から約20pが水を吸って変色していた。そして、強度はなくなり、ふにゃふにゃの状態。これではバイクを収納できない。まさに想定外の出来事だ。

すぐさまホテルからドライヤーを借りてきて、乾かすことに。5台のドライヤーで、皆が協力し、昼過ぎには何とか乾かすことができ、 梱包完了。やれやれセーフだ。ヴェゾン村の街歩きは次回のお楽しみだ。まさか昨夕の豪雨がこんな結末をもたらすとは、本当に人生は「一寸先は闇」だ。

今回も小さなトラブルはたくさんあったが、落車や怪我はなく、楽しく過ごせたので大満足だ。これも偏に石井さんのお陰だ。さらに、貴重な収穫もあった。また、 腐りつつある大西の脳みそに刺激が入ったのも大きな収穫だ。

■最後に

最後に、ひとりでも多くの 日本の自転車乗りの皆さんにこの地を訪れて欲しいと願います。自転車乗りにとって夢のようなツーリング旅だと思います。 ぜひ、一度は体験して欲しいと願います。

我々のやり方は費用的に決して高いものではありません。また、高いお金をかけたからと云ってできる旅でもありません。 興味のある方にはお気軽に連絡をください。アドバイス致します。

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■欧州自転車ツーリング第3弾のレポートはこちら

【Special Thanks】

写真・動画提供:石井由美