イベント報告
第18回ロタブルー・トライアスロン!
2011年11月12日(土)
18th Rota Blue Triathlon !!
■KFC徒然

どんな大会でも、なん度やっていても、その時々で心配事はあるものだ。この度はガバメント(政府)の財政難と、島民の減少だ。1クラブが 背負うには問題が大き過ぎる。

しかし、現地航空会社「フリーダム」の突然の機材故障を除けば、マンパワーもそこそこ確保でき、天候にも恵まれ、海のコンディションも良く、 大会自体は満足のいくものだった。

【突然のホテル閉鎖】

8月の募集開始の時点で、島に3つあるホテルの内、ココナッツビレッジとロタホテルがクローズになっており、ロタリゾートしか使えないと連絡が入った。

原因は観光客減少による経済的なダメージだ。かなりシリアスな問題だ。

そこで、ロタリゾートにトライアスロン・ツアー用として全室を提供してもらうことになった。これで昨年とほぼ同数の人数を受入れることができる。1件落着。

【問題なのはバイクの輸送】

次に、日本からロタへのアクセスに関して問題が持ち上がった。人は何とかなりそうだが、バイクの輸送に問題が生じた。というのは、今年、 コンチネンタル航空はユナイテッド航空に事実上吸収合併され、昨年までのコンチと違いユナイテッドはバイクをたくさん運べないと云う。

成田からのチャーター便には乗客は160人くらい乗れるのだが、スーツケースを載せると、バイクはコンパクトなハードケース、または、 段ボールで50個ほどしか載らないのだ。 ソフトケースは無駄なスペースが多く、30〜40個くらいしか載せられないと云う。

そこで、その他の70台ほどのバイクは別便でグアムまで運び、 そこから翌日早朝発のカーゴ(荷物)便チャーターでロタまで運ぶのだ。また、関西発と名古屋発のバイクは人と共にグアムまで来て、 グアム〜ロタ間は成田発と同じカーゴ便チャーターで運ぶ。

毎年、旅行社が最も神経を使うのがこの部分で、日本とグアムとサイパンの各旅行社がチームを 組んで、この対応に当たるのだ。

このような状況だから、バイクの輸送台数に限りがあり、バイクの台数が輸送の限界に達した時点で募集を締切りにさせてもらった。そんな事情で キャンセル待ちの方が多く出てしまった。いろいろに手を尽くしたのだが、結局、数台しか追加受け入れをすることができなかった。

バイクの輸送に関しては、年々厳しくなっている。海外での大会運営は国内と違って神経を使う部分が多い。来年が心配だ。しかし、 来年には来年の風が吹く。

今年、白戸選手による人気のバイク・ツーリングを中止したのは、バイクのロタ到着時間が不慮の原因で遅れた場合、 現地で混乱が生じ、選手の皆さんに迷惑がかかることを避けるためだ。

【18回目の出発】

大会10日前の11月2日(水)に日本を発って、サイパンへ入った。我々KFCが100%運営するロタとテニアンの大会は、準備のため、遅くても大会日の 10日ほど前には出発しなくてはならない。

そして、マリアナ諸島(サイパン・ロタ・テニアン)の行政の中心地サイパンのある観光局本局へ行き、前もって準備作業の 行程や予算など諸々の打合せをするためだ。この時点ですでに気持ちは臨戦態勢に入っている。

昨年からガバメントが経費節減のため、ほとんどの政府機関を毎金曜日休日にしている。だから観光局も金曜から休みに入る。そのため、 木曜日にはミーティングを済ませなくてはならない。

そして、その週末にはロタへ入り、翌週の月曜日にはロタ市長たちとのキックオフ・ミーティングがセットされている。 このミーティングは最も大切で、この席上で週末の本番に向け、全ての準備作業の流れが決まるのだ。

【厳しいマリアナの経済事情】

近年、マリアナの経済は年を追うごとにだんだん厳しくなっている。過去18年間を通して、今年が最も悪い。島民たちも口々に言う「今が一番悪い、 こんな状況はかつて経験したことがない」と。島民や会社だけでなく、政府にもおカネがない。

島内に仕事がないので、多くの島民たちが仕事を求めてアメリカやグアムへ移住してしまった。彼らはUSパスポートを持っているので、アメリカへの移住は 簡単だ。

数年前までは島民と出稼ぎ外国人を合わせて3000人ほどの人口があったが、今ではその3分の1の1200人ほどに減少してしまっている。現に、 島内の交通量は明らかに減った。それに、民家の空き家が目立つ。

【大掛かりなコース整備】

トライアスロンという大掛かりなイベントを開催するためには、多くのおカネとマンパワーを必要とする。

例えば、バイクに関しては、約20kmにも及ぶ コース両脇の芝生をカットして綺麗に整えたり、スリップが原因で転倒しないようにと、道路上に溜まっている土砂を取り除き、 消防車の放水で丁寧に洗ったりするのだ。

また、ランでは、キャノン(砲台)から先のダ―ト(地道)が度重なるスコールでひどい凸凹状態になっている。それをブルトーザーやローラーなどの重機を入れて、 選手がランシューズでも走れるように整備する。幾らジャングルランと云っても、放ったらかしと云う訳にはいかない。

島民が減少したためか、今年はBコースがひどく荒れていた。4輪駆動でもキツイくらい路面がえぐり 取られているた。この部分はダンプカーで土を運び入れなければ、補修できない。それに両側の草木が伸び放題で、道路にはみ出し、カットしなくては 先に進めない部分も多々あった。これらのコース整備にも相当の費用がかかる。

【優秀なロタのダイビングショップ】

スイムに関しては、毎年、簡単にブイを設置しているように見えるが、それはセレナを始めとするロタのダイビングショップが非常に優秀だからだ。

これほど水深の深い海でブイを打つ(設置)ことは並大抵のことではない。いくらコストをかけても、他の島ではこうはいかない。我々の経験からロタの ダイビングショップ以外ではできないと断言できる。

それに、トライアスロン期間中は仕事のスケジュールを空け、トライスロン・シフトをひいていてくれている。有難いことだ。

因みに、テニアン大会を除く、他の南の島大会のスイムコースは浅く、ブイとロープを付けたブロックをボートから落とすだけという簡単なものだ。 だから、ダイバーを必要としない。

【危惧に終わったマンパワー不足】

スイム、バイク、ランの3種目をやるトライスロンにはマンパワーがたくさん要る。日本を発つ前から島民が少ないと聞いていた。

しかし、 これまでの長い付き合いからローカル(チャモロ人)たちは「やる時は、やる!」人たちだ、 ということが分かっていた。だから、多少の不安はあったが、 何とかなるだろうと感じていた。

いざ、蓋を開けてみると、大会前のコース整備のマンパワーからレース本番のバイクやランのエイドステーションのスタッフ、スイムレスキューチームの スタッフ、それに、トラフィック・コントロールの警察官や救急車や病院関係者など、いつもと変わらず満足行くものだった。

【優秀だったロタ観光局スタッフ】

しかし、ロタ観光局スタッフだけには大きな変化があった。昨年までは10数名のスタッフが働いていた。しかし、今年は局長以下、全員が辞めてしまい、 そのほとんどが島外へ働きに出ていた。

そんな事情で、今年は5人の新しいスタッフがいるだけになっていた。彼らのやるべき仕事は非常に多い。 バイクとランのコース上に置くサインボードを制作し、それを当日早朝に設置する。さらに、バイクラックとシャワー、 それにフィニシュ・ゲートも制作と設置をしなくてはならない。

不安がる新スタッフに対して、やるべき仕事や各作業のタイムリミットなどを一から説明し、 全コースを案内して回った。そして、各サインボードの設置場所を実際に見せたりして、イメージを意識させた。

大会前日、観光局で保管しているはずの今年度用のバナー(スタート・フィニッシュの横断幕)が見当たらないと、焦って連絡してきた。幸い、5年前の古いバナーなら 見つかったと云うので、それで急場をしのぐように告げた。バナーがなくては恰好がつかない。この際、スポンサーロゴなど何でもいい。それがあることが大切なのだと伝えた。

彼らは期待以上に良く働いてくれた。レース前日は夜遅くまで、港でバイクラックの設置をやってくれ、早朝からサインボードの設置を やってくれた。眠る時間は無かっただろう。彼らの働きで、何の問題もなく上手く行った。彼らは優秀だった。

普段、のんびりおっとりのゆる〜い気質のチャモロ人たちが暗くなるまで残業するなんてことは有り得ないこと。さらに翌日未明から働くなんて・・。 さすが「やる時は、やる!」人たちだ。

ロタ島の誰もが注目する大切なイベントで粗相すると、その後、どうなるのかをよく知っている。そんな状況下、 新局長は終始緊張状態にあったのが可笑しかった。

【最悪の出来事発生!】

今年、最悪の出来事は現地航空会社「フリーダム」の30人乗り機材が最悪のタイミングで故障したことだ。

日本を発つ日の前夜(1日)にフリーダムの 30人乗り機材が修理のため、明日から運行キャンセルになると連絡が入った。でも、選手が利用するまで10日間もあるから直るだろうと考えている。 過去の経験では、通常3〜4日で直っているからだ。

それで、その間は7人乗りの小型機が代替運行する云う。7人乗りと言っても荷物があれば、5人しか乗れないと云う。バイクやゴルフケースなどは絶対に 載らない。翌週になれば、30人乗り機材が復活するだろうと軽く考えていた。ところがドッコイ、なかなか復活しそうもない。

大阪と名古屋からの選手20数名がグアムに到着するのは10日(木)午後だ。それまでに何とか30人乗り機材を復活させるように様々な人脈を使って プッシュした。しかし、結局、「できない、無理」と云うことになった。

その結果、10日は小型機によるうグアム〜ロタ間のピストン輸送で対応することに なった。トライアスロン・ツアーが最優先なので、この日の他の乗客は全てお断り状態となった。さらに翌日もフリーダムは全運行をキャンセルした。 というのは、前日にパイロットを働かせ過ぎたからだ。例え、お粗末なフリーダムと云えども、パイロットの労働時間は法律で定められている。

結局、13日(日)の帰国日(日)も30人乗り機材は復帰していなかった。だから、グアムへの移動は往路と同じ方法を取るしかなかった。 グアム・トランジットの皆さんには本当に申し訳なかった。

さらに帰国直後、12月末まで30人乗り機材は運行できないとフリーダムから公式発表があった。小型機では自転車どころか、 ダイビング器材やゴルフバックさえも、ロタへ持ち込めないことになる。さらに、日本からの搭乗予約もできないし・・・、年末年始の稼ぎ時、 ロタはどうなるのだろうか・・?ちょっと心配だ。

【レースに関して】

雨がちだった天気も大会日が近づくにつれて回復してきた。それに、いつも神経を使う海も、試泳、本番共に穏やかで、 近年で最も良いコンディションだった。

レースはオンタイム6:30amに メイヤー(市長)の号砲で始まった。トップでスイムアップしたのは白戸太朗選手、続いて、松山文人選手、3番手には宮塚英也選手・・・。 この光景を見ていると十数年前のトライアスロン全盛期を彷彿させられる。

結果は、Aタイプ優勝は白戸選手、2位はバイクで逆転した宮塚選手、3位は松山選手でした。女子優勝は丹羽なほ子選手、 2位は村田明子選手、3位は松原その子選手。

Bタイプ優勝はキムカツこと木村克己選手、2位は佐藤正昭選手、3位は伊藤航人選手。女子優勝は土井年美選手、2位は鈴木香選手、 3位は山本彩選手でした。

多忙な企業経営者のカテゴリーであるCEOチャレンジ優勝は三浦健一選手、2位は横瀬武夫選手、3位は井元健一選手でした。

レースには直接関係ないが、今年は脱水症に陥った選手がひとりもいなかったのが良かった。また、バイクでは落車が1名あった ものの、軽い擦過傷で済んだ。幾ら大会運営がスムーズに終わっても、病人や怪我人を出してしまったら、その大会は成功裏に 終わったとは思えない。達成感も湧かないし、その後も、ずっと心が重い。

【お気に入りレストラン「ベアフット・ターバン」】

昨年にオープンしたローカルレストランで、ロタ滞在中、我々が通い詰めているマイブームのご飯処だ。

ロケーションもロタらしくていい。海岸沿いのバイクコースに面しており、テラスの下は白砂のビーチで、その沖は青いフィリピン海だ。

メニューはローカルフードの 肉料理が中心だ。お手軽なハンバーガーからTボーン・ステーキまで、何でもある。もちろん、ビールやウィスキーも飲むことができる。 お勧め料理は、アイランド・プレート(プレートとは日本で云う定食のことで、肉・サラダ・ご飯のセット)、ドライビーフ、 手作りハンバーガー等などだ。値段は10ドル前後だ。

オーナーはトーマス・マングローニャといい、ロタ空港の責任者だ。彼との付き合いは長く、第3回と4回大会の現地の実行委員長を やってくれた。今なお、親しい仲だ。

しかし、料理をしているのは彼のお姉さんでチャモロのおばさんだ。料理のセンスがよく、 味はチャモロ風でフィナデニが合う料理ばかり、抜群に美味い。

屋号の「ベアフット・ターバン」とは、“裸足の酒場”と云う意味だ。なかなかいいネーミングだ。トーマスが名付けたのだろう。

【最後に、ちょっといい話】

試泳の前日にロタ警察へ出向いた。目的は、海担当の警察官に、試泳の時には1:00pmのオンタイムにスイムコース上に待機しているように、と念を押すためだ。

警察署長には数日前のキックオフ・ミーティングの席上で、スケジュールは全て時間厳守と伝えてある。しかし、ゆる〜い気質の南の島では、 それだけではなかなか時間厳守ができないことが多い。この部分は選手の安全に係わる最重要事項なので、やはり、担当者個人を捉まえて、 念を押しておく必要があるのだ。

すると、奥から現れた担当者は、何と、米軍に入隊したはずのライ・マングローニャだった。 彼はロタ・KFCメンバーの一人だ。聞くと、今年、イラクから帰還したと云う。 3年前に米軍の給料の良さに魅かれて入隊したのだ。残念ながら、彼から聞いた戦地イラクの現状はHPには書けない。

見た目には、五体満足で、精神面もダメージはなさそうだ。いつもと同じようニコニコしている。ライとは阿吽の呼吸で、訪ねて来た理由が伝わっている。

それでも、ゾーリ(ポリス専用のスピードボート)のエンジンチェックだけはしておくようにと伝えた。過去、エンジンが壊れて動かないということが多々あった からだ。試泳の時は1時間前の12時には沖でスタンバイしていた。さすがライ、エライ!!

【レポート・フォト】

■2011 ロタブルートライアスロン スイムインスペクション(試泳)


  

■2011 ロタブルートライアスロン レーススイム


【Special Thanks】

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写真提供:小野口健太 舘岡正俊 SIRENA RUBIN