2015年2月14日
今年も北マリアナ諸島テニアン島で、この島最大の食の祭典「ホットペッパー・フェスティバル」と同日開催(2月14日)で第15回目 となる 上記大会を開催しました。
でも、4年前の2011年は東日本大震災で中止にしているので、この島との付き合いは 実質16年目になります。
「ホットペッパー・フェスティバル」との同日開催は現地テニアンの希望で始めたものですが、参加者の日本の皆さんやサイパンの選手にも大好評です。
また、この名称の由来は、テニアン島は世界で最も激辛の唐辛子(ホットペッパー)の産地であり、それを使った美味しい料理がたくさんあるからです。
トライアスロンという競技は島の陸海を広範囲に使うので、島の最高権力者である市長の協力は不可欠です。 言い方を変えれば、 市長の全面的な協力があれば、何でもできると云っても過言ではありません。
USテリトリーでは、日本の行政システムと 大きく違い、警察機構も市長の指揮命令系統下にあるということです。だから、 市長がOKと云えば、警察の協力を得て、道路も海も自由に使えます。
特にテニアンでは、陸上部分に関するバイクとランのトラフィックコントロールだけではなく、海に関しても、スイムのブイ打ちから レスキューまで 警察が担ってくれます。これほど警察が前面に出てやってくれるのはテニアンだけです。
ところが、昨年11月の市長選挙で、長年一緒にやってきたデラクルズ市長が敗れ、 対抗勢力のサンニコラスが市長になりました。 そして、 彼の就任式が2015年1月15日だったので、新市長に対して、それ以前には、何の動きも取れませんでした。
それに、就任式直後の市長は 島外出張(オフ・アイランド)が多く、日本を発つ前に新市長とはなかなかスムーズなやり取りが できませんでした。しかし、出発日は開催日から 逆算して10日前の2月4日(水)に決まっていました。
日本を発つ前に、サイパン観光局本局とテニアン観光局支局、それと宿泊先であるテニアン・ダイナスティ・ホテル&カジノからは 例年同様に 協力を取り付けていたので、予定通り4日(水)に見切りでサイパンへ出発しました。
サイパンではルーティン・ワークで ある観光局本局や Tシャツ工場での仕事を済ませ、3日後の7日(土)にテニアンに入りました。
翌8日は日曜日なので役所関係は休み、役所スタッフとの打合せはできません。よって、新スイム会場の 現場確認をしたり、バイクスタートまでの導線を考えたりしました。
と云うのは、今年15年目にして、スイムの会場変更を決めていました。それは過去14年間使ってきたタガビーチからカマービーチへの変更です。 理由は、テニアンで最も穏やかなビーチがカマービーチだからです。このビーチは砂浜が広く、タガビーチと違って、 トロピカルストーム程度の 弱い波風では荒れることがないからです。安全安心のスイムコースという訳です。
週明け月曜日(9日)、午後1時から市役所内で観光局や警察等々を集めて、恒例のキックオフ・ミーティングをしました。 これは日本を発つ前に リクエストしていたものです。
でも、肝心の市長は木曜日までオフ・アイランドと云うことで欠席です。 その席で、翌日午後1時から警察・消防と 一緒に沖に出て、新スイムコースの距離を測定し、ブイを打つポイントを決める作業を することになりました。これは今年の最も重要な 準備作業です。
10日(火)、約束の午後1時に港へ行くと、ゾリアック(警察専用の高速艇)のエンジンがかからないと云う事で、警察官たちが バタバタしていました。 ゆる〜い南の島では、こんなことはよくあることです。でも、もし、この時、海難事故の救助要請が入ったら、 どうするんだろう。結局、彼らではダメで、 メカニックを呼ぶことにしました。さすがメカニック、5分ほどでエンジンをかけました。
1時関遅れの出港です。海は風も波もなく静かです。計測には消防のGPSを 使ったので距離は 正確です。GPSにブイを打つポイント(緯度と経度)を入力し、この日の作業は1時間ほどで終わりました。
そして、 ブイの根っことなる アンカー(重り)は、翌日に彼らが沈めておくと言ってくれました。
毎年、手伝ってくれているので、その辺は手慣れたもの、頼りになります。 それにしても、警察のゾリアックに民間人、 それも我々外国人が普通に乗船できるのは、テニアンかロタ以外では有り得ません。
帰り際、今年は大きなブイを新調したので、これまでより大きくて重いアンカーを沈めるように伝えると、人懐っこい笑顔で、 親指を立て、 任せろと言う。昨年、レース中にブイが動くと云う失敗をしたので、彼らもちょっと恥ずかしそうでした。
本番前日、13日(金)は、午前10時にいよいよ新市長との顔合わせ、その後、午後1時間半からカマービーチでの試泳、 続いて、 夕方5時から選手受付と競技説明等々で忙しくなります。やはり、選手が到着すると、一気に忙しくなります。
市長室へ入るなり、にこにこしながら「Long time no see!(お久しぶりです!)」と言って市長から握手を求めてきました。実は、 新市長のサンニコラスとは10年ほど前、彼が弁護士をやっていた頃、サイパンの友人ジェームス宅で一緒にBBQを食べた仲です。その後も時々出会っており、 それを覚えていてくれたようです。そんな和気あいあいの雰囲気で、新市長との顔合わせは終わりました。
我々KFCの親友である前市長デラクルズと争って新市長になったサンニコラスが、我々KFCに対して、どんな態度で臨むのかを 見守っていた取り巻き連中も、これで方向性がはっきりした訳です。すなわち、島挙げて皆でトライアスロンに協力すると云うことです。 このように南の島でのイベントは政治抜きでは成り立ちません。
帰り際、市長は秘書に「なぜ、もっと早いタイミングで面会をセッティングしてくれなかったの?」と、秘書は「だって、市長が昨日まで オフ・アイランドだったでしょう」等々。
カマービーチでの試泳は初めてです。そして、木曜日(12日)入りした参加者30数名を対象としたものです。翌金曜日入りの参加者は 参加できません。
なぜ、全員が木曜日入りしないかと云うと、国際線の成田〜サイパン便が常にタイトな状況で同じ便で十分なチケットの 入手が困難のです。だから2班に分かれてテニアン入りするしか手がないのです。
試泳時の皆さんのカバーは、本番同様に警察が担ってくれます。全コースを泳ぐと疲れるので、250m沖に黄色い三角ブイを打って、 宮塚さんを先導に、それを回って来ると云うやり方にしました。
そしてKFC専属の小野口カメラマンが警察のボートに同乗して写真を撮る 予定でした。ところが、ビーチで集合写真を撮っている内に沖に出て行ってしまい、肝心の沖での試泳写真を撮り損ねることになりました。 海外では、こんなミスコミはよくあることです。
14日(土)朝6時から最終登録(ナンバリング)をカマービーチで行いました。ここは宿泊ホテルから約500mの距離にあります。 7時頃には沖の黄色いブイが全部セットされ、会場の空気も張りつめ、選手の皆さんも緊張した面持ちになってきます。
また。その頃には多くの 島民がレースを観戦するためカマービーチに集まってきていました。市長もやって来ました。 市長には7:30の号砲をお願いしておきました。 因みに、この日、トライアスロン・デビューされる人が10数名いらっしゃいます。
07:30、一斉にスタートして行きました。これまでのタガビーチではフローティングスタートでしたが、今年から砂浜からのスタートです。 水飛沫が立って迫力があります。朝日に輝くターコイズブルーの海、黄色い三角ブイ、カラフルな選手のスイムキャップ等々、 なかなか美しい眺め です。
砂浜から大勢の島民たちが見守っています。おそらく、カマービーチでこれほど多くの人が泳いだのは 初めてのことだと思います。
宮塚英也選手がトップでスイムアップ(25:35)してきました。続いて、スコット選手(26:57)、ピーター選手(29:00)。 スイムアップした選手が 次々とバイクコースへ出て行きます。
テニアンのバイクコースはテクニカルで、変化に富んだアップダウンがあり、 タフで楽しいコースです。 ランは見晴らしの良いコースで、南の島らしくヤシの遊歩道を駆け抜けてフィニッシュとなります。
午後1時頃、怪我人や脱水もなく、出走者全員が無事完走されました。途中で一人のリタイヤもなかったのは、初めてのことです。 最終走者のタイムは5:28:25です。本大会では、トライアスロン・デビューされる方が多いので、制限時間を設けていません。但し、 余り遅いと止めることもあります。
レース中、1月15日にロタの新市長に就任したエフレン・アタリックがゴール地点に「大西さんがいると聞いて、会いに来た。」と、 ちょっこり現れました。
なぜ、ロタ市長がテニアンにか、といいますと、ホットペッパー・フェスティバルに招待されていたようです。
その場で11月開催のロタ大会の話になりました。テニアン大会には負けないと云う感じで、エフレン市長はやる気満々で、新アイデアを いろいろ提案してきました。11月のロタ大会が楽しみです。でも。先ずは懸案のアクセスを何とかしなければ、です。
テニアン島最大の食祭典「ホットペッパー・フェスティバル」はトライアスロンが終わった後、 すなわち、午後2時から始まるように セットされています。
トライアスロン大会と同じくカマービーチで、土日の2日間に亘り行われます。 日本の縁日のような風情で、 食べ物のブースがたくさん出店されており、子供たちによる地元チャモロ・ダンスやヒップ・ホップ・ダンス等々が あります。
おもしろいことに、この会場ではトークンという専用のコインで食べ物やドリンクを購入します。だから、まず、島民たちは会場内の 片隅にある両替所でドルを トークンに換えます。しかし、選手の皆さんは前日の受付時にトークンを10枚プレゼントされます。これをオーバーした場合はドルで支払うこともできます。
目玉のイベントである激辛の唐辛子の早食い競争も行われます。過去には、この競争で、余りの辛さに失神し、救急車で 運ばれた人もいると云う。俗に、南米産のハバネロが世界一辛い唐辛子と言われていますが、テニアン産の方がもっともっと辛いと 思います。
米粒の2倍ほどの小さなものですが、生でそのまま口にすると、危険なほど辛いです。でも、醤油、ローカルレモン、玉ねぎの3点を 加えてれば、 美味しいフィナデニ醤油に変身します。本当に美味しいので機会があれば、ぜひ、試して下さい。 フィナデニ醤油はテニアン以外にも、食文化が同じサイパン、グアム、ロタにもあります。しかし、パラオにはありません。
今年は北海道と九州から数名の方が参加されました。現在、サイパンへのダイレクト便(デルタ航空)は、 成田からしか発着していない為、移動にはたいへんなご苦労があったとお思います。テニアン大会最大の問題は、 成田(サイパン経由)からしか来島できないと 云う点に問題があります。
しかし、来年からは大阪や名古屋からもアシアナ航空を利用し、仁川(インチョン)経由でサイパン入りして、参加して頂けないか、検討しています。 1年前では考えられなったアクセスルートです。確実に時代が変わったのです。また、大阪や名古屋から成田を経由してサイパン入りもあり と考えています。
国内外問わず、どこの大会でも、次々と個別の問題が出てくるものです。それらを一つひとつやっつけながら開催しているのが現状です。 大会運営は遊びの延長で、楽しいと思う大会しかやっていませんが、一生懸命となると、それはそれでしんどいものです。
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写真:小野口健太