イベント報告
第14回ターコイズブルー・トライアスロン&スイム
14th Turquoise Blue Triathlon & Swim
2014年2月15日
■KFC徒然

2月15日(土)に北マリアナ諸島テニアン島で、2014年度KFCイベントの幕開けレースとなる「第14回ターコイズブルー・トライアスロン& スイム」大会を、テニアン島最大の食の祭典「第10回ホットペッパー・フェスティバル」に併せて開催しました。

テニアンはロタ島と同じく、アクセスの良くない島なので参加ツアーを組まないと大勢の選手と自転車とを円滑に、その日の内に運 び入れることができません。

ところが、定番の3泊4日パターン(木曜日発、日曜日帰り)は年間を通して飛行機がタイトな状況なので、 金曜日発と月曜日帰りの1日ずらしの前後2パターンでツアーを組むことになりました。参加者の皆さんには参加申込順に好きなパターンを 選んでもらいました。

因みに、この時期、大会オフィシャル・ホテルであるテニアン・ダイナスティ・ホテル&カジノも満室状態でした。

【関東甲信豪雪情報】

開催日が近づくにつれ、前週末に続いて今週末も関東に大雪と云う情報が入ってきました。世の中、何が起こるか分からないものです。 最近使い慣れた「想定外」という言葉以外にありません。2週連続で、何十年ぶりという大雪が日本(関東甲信)を襲うということです。

現地の米国版CNNでも「Japan Winter Panic」というタイトルで豪雪情報を伝えていました。このニュースは島の人たちも知っており、 心配して声を掛けてきます。

参加者の皆さんが無事に成田空港まで来られるのだろうか、成田が閉鎖という事態にならないだろうか と云う心配の種が日増しに膨らんできました。

結局、心配を余所に皆さん無事に到着されました。金曜日発の選手は、その日の午後から雪が積り始めたので、ぎりぎりセーフでした。 降雪がもう一日前倒しになっていたら、皆さん来られなかったでしょう。木曜日発の選手も、関西や九州からの参加者は成田空港までの アクセスに苦労された様子でした。

【その日は大潮】

一方、テニアンでは、我々が8日(土)に到着して以来ずっと穏やかで静かな海でした。しかし、過去の経験から、このまま平穏に、 何の気苦労もせずに、終わる訳はないと思っていました。案の定・・。

13日(木)午後、道路に折返し地点を示す矢印をペイント書きしていた時、DPS(Department of Public Safety / 警察署)の 署長レイ・パンゲリナンが興奮気味に、「タガビーチが波で浸かり始めた。」と知らせにやってきました。レイは、メイヤー(市長) レーモン・デラクルズの指示で今年度のチェアマン(現地大会実行委員長)です。

南の島で長年大会をやっていますが、現地警察官が実行委員長と云うは初めての経験です。近年、 我々と警察官たちとはたいへん良い関係に あるので運営は楽でした。

直ちに、スイム会場であるタガビーチの様子を見にいきました。 2000年開催の第1回大会ほどではないですが、波が砂浜を覆って いました。海が荒れているというよりも大潮による海面上昇が原因のようです。天気予報(衛星写真)によると、 やはりサイパン・グアム付近にはストームを示す雲はなく、快晴を示しています。

タガビーチはテニアンで最も小さいビーチです。砂浜の奥行きが波際から3〜4mくらいしかなく、背後はサンゴ岩の壁が迫っています。 だから、海面が持ち上がると通常の波でも砂浜が覆われてしまいます。そうなると、選手の待機のためのスペースがなくなるのです。

潮汐表(グアム版しかない)を見ると土曜(大会当日)は大潮のピークなっていました。でも、テニアンは、グアムから約200q離れて いるので、その潮汐表は正確には欠けます。いざ、蓋を開けてみるまでは分からないと云うのが現状で、いつものことです。

大会運営とは こういうもので、過去、何の問題もなく、順調にことが運んだ大会など1つとしてありません。 突然持ち上がった問題に対し、臨機応変に対応するのも大会運営の醍醐味の一つでもあります。

海自体が荒れている訳ではないので、波打ち際さえ抜けてしまえば、泳ぐには差ほど問題はありません。だからスイム会場に隣接する タチョンガ・ビーチに変更して、実施することに決めました。

【テニアン初の試泳】

大会前日(金)午後1時半から2時半まで、トライアスロン界のレジェンド宮塚英也選手を中心に、すでに到着されていた前入りツアー の約20名を対象に試泳を行いました。テニアン大会での試泳は今年が初めてです。

皆さんのカバーには2隻のボートの乗ったボーティング・セフティ(Boating Safety)の警察官が受け持ってくれました。 試泳に関しては、波打ち際を除けは、皆さん良い感じで泳げたようです。明日の本番もここにすることに決めました。

因みに、ボーティング・セフティとはDPS内にある海の安全を護るセクションの名称です。

【本番の朝】

とは云うものの、やはり心配です。なぜなら、本大会にはトライアスロン・デビューの選手、すなわち初心者の皆さんが多いからです。

近年、アイランドシリーズをデビュー戦に選ばれる人が多くなってきています。今後のためにも、第一印象は大切ですから、 初心者にも十分に配慮した運営をしなくてはなりません。

念には念、早朝に現場の海のコンディションをチェックしました。昨日と同じような感じです。しかし、これ以上、打ち寄せる波が 大きくなれば、沖合の状況に関係なく、スイムを中止にしようと密かに決断していました。スポーツは冒険と違って、 安全が第一ですから。

選手の皆さんは、テニアンの海を楽しみに、遥々遠くから時間とおカネを費やして来られているので、何とか泳がせてやりたい。 しかし、事故が起こっては元も子もありません。

このような状況下では、いつも心の中で葛藤があります。最も神経を使う部分でもあります。しかし、 主催者が迷っている様子を見せれば、選手も現地スタッフも不安に陥るので、表面上は平常を装っています。

【スタート】

波打ち際の大波を避けるため、ビーチ・エントリー方式をフローティング方式に変更し、予定通り07:30にスタートしました。

スタートの合図をするはずだったメイヤー(市長)デラクルズは1分ほど遅れて、申し訳なさそうに会場へやってきました。 スタートの合図が出来ず、残念がっていました。毎年、余裕を持ってやって来るの彼なのに、きっと何かあったのでしょう。 その代り、夕方のアワードには早くから来て、立派にホスト役を務めてくれました。

選手のカバーに関しては、試泳に続き、頼りになるボーティング・セイフティが海上と水中から見守ってくれました。

30分ほどするとトライアスロン部門とOWS1500m部門の選手が元気よくスイムアップしてきました。そして、次々とバイクコースへ スタートして行きます。波打ち際では地元の人たちが選手に手を貸していました。

テニアンはアップダウン、コーナーと変化に富んだ極上のバイクコースを持っています。バイク得意の選手にとっては、 相当に魅力的なコースです。

トラフィック・コントロールはパブリック・セイフティ(Public Safety)が担ってくれます。 因みに、パブリック・セイフティとはDPS内にある一般的な警察部門です。

今年、ランコースに少し変更を加えました。ゴール地点を「ホットペッパー・フェスティバル」の会場であるカマービーチにしました。 変更したことは正解だったのですが、それにともなって誘導スタッフの人員配置で反省点がありました。

事故、怪我、脱水症もなく、レースを終えることができました。レース後、完走された選手の皆さんは大変満足された様子でした。 心配していた海も、あまり気にならなかったと云う選手がほとんどで、安堵しました。レースの模様は下記【レポート・フォト】をご覧ください。

因みに、大会翌日(日)には大波も消え、タガビーチでは地元子供たちが遊ぶ日常の海に戻っていました。大会運営にはよくあるパターンです。

【20年目にして初の出来事】

本大会は制限時間を設けていません。しかし、選手の健康、ボランティスタッフの健康を考えると、炎天下、4時間経過した時点でも ランに移っていない選手は、止めざるをえません。

最後までやりたいという選手の気持ちは痛いほど分かります。しかし、申し訳ないのですが、心を鬼にして 2選手に棄権を勧告しました。

棄権勧告は大会運営20年目にして、初めてのことです。遥々日本から来られたことを思えば、こんな勧告はしたくないのですが、 スポーツは安全が最優先ですから。ご理解ください。

【ホットペッパー・フスティバル】

テニアン島が誇る食祭典「ホットペッパー・フェスティバル」は大会日(土)と翌日(日)の2日間に亘って、カマービーチで 催されました。日本で云う縁日のようなもので、会場には多くのローカルフードのブースが出展されています。

その中心にステージがあり、大人や子供による歌やダンス、それに人気の激辛唐辛子の早食い競争なども催されます。誰でも参加 できますが、テニアン唐辛子は激辛というより危険ですから日本の皆さんは参加しないように。

激辛唐辛子と云えば、メキシコ産のハバネロが有名ですが、 テニアン産のものはそれを遥かに超える超激辛の逸品です。お土産として会場で買うこともできます。

また、カマービーチでのボート(ドラゴン)レースやビーチバレーボール、それに綱引きなどのアトラクションもあります。

因みに、表彰式は、最初からフェスティバルのスケジュールに組み込まれており、会場のステージを使って、夕方6時から催されました。 プレゼンターはメイヤーが行い、盛り上った表彰式になりました。

その後、選手の皆さんは夜遅くまで会場に残り、テニアンの食の祭典を 満喫されていました。大会との同時開催は選手の皆さんに大好評でした。来年からも同時開催でやるつもりです。

【来年に向けて】

来年からはゴール地点だけでなく、スイム会場もホットペッパー・フェスティバルの会場であるカマービーチに変更の予定です。

このビーチは年間通して穏やかで、砂浜も広く、透明度も申し分ありません。難点はホテルから500mほど離れていることです。

しかし、海のコンディションの心配がなくなると云うことは、トライアスロン運営において、心配事の8割くらいがなくなると 云うことです。我々主催者も、現地スタッフも、選手の皆さんも、海のコンディションに関する心配がなくなると云うことは 大きいことです。

【最後に】

昨年に続き、今年もトライアスロン雑誌「LMINA」主催の「テニアン・チェレンジ」が開催されました。また、これとは別に、 現地で「宮塚英也トライアスロン・キャンプ」も開催されました。初心者の方は、ぜひ参加されることをお勧めします。

東洋人で唯一ハワイ・アイアンマンのトップ10入りを果たした実績を持つ宮塚さんが、実践で培ってきた価値あるノウハウを 伝授してくれます。さらに、来年から、その宮塚さんが大会オフィシャル・メカニックを担ってくれます。まさに世界一贅沢な メカニックです。初心者には心強い限りかと思います。

また、宮塚さんは個人的にもテニアン島が大好きで、選手の立場で、14年間ずっと運営をサポートしてくれています。

【レポート・フォト】
【Special Thanks】

テニアン政庁、テニアン警察&消防、テニアン島民、マリアナ政府観光局、テニアン・ダイナスティ・ホテル&カジノ・テニアン海の家

写真:小野口健太