2012年5月13日
東京トレイルランシリーズ第2戦「TOKYO成木の森トレイルラン大会」を5月13日(日)に開催しました。この時季、成木の森は新緑の最も奇麗な季節です。
昨年の第一回大会は成木の家から棒の嶺山頂を折り返すというシンプルな往復コースでした。しかし、今年からは成木の里をぐるっと周回するコースにし、 成木の森の全域をコースに組み込んでトレイルランナーの皆さんに楽しんでもらうことにしました。
そのコースは4つの山頂とそれらを結ぶ尾根を駆けるコースで、山頂からの眺めは東京トレランシリーズの中でも群を抜いています。
詳細は、成木の家をスタートし、常福院境内を駆け抜け、高水山山頂、岩茸石山山頂、黒山山頂、棒の峰山頂、そこで折り返し、再び黒山山頂へ戻り、 都県境の尾根道を小沢峠へ。その後、成木の里にある畑道を駆け抜けゴールするというものです。距離は25qです。 【コース図参照】
また、岩茸石山から黒山への間には成木の森が誇る絶景ポイントがあます。そこは絶壁になっており、遥か下方にはミニチュアのように民家や川の流れの景色を 見ることができます。また、晴れていれば、ま正面には富士山を望むことができます。しかし、勿体ないことに、この絶景ポイントはほとんど知られていない のが現状です。
成木の森にあるハイキングコースは“関東ふれあいの道”に指定されてはいるももの、展望の良い岩茸石山山頂と棒の嶺山頂以外はほとんどハイカーを 見かけることはありません。特に、岩茸石山から黒山の間、それに棒の峰から小沢峠の間は寂しく、荒れた、欝蒼としていました。
これら人の少ないハイキングコースは長年に亘って手入れがされておらず、樹木がせり出したり、落ち葉などで山道がすっかり消えてしまっていました。 また、長年の風雨などで崩れたりしている部分もありました。これではハイカーが歩かなくなるのも当然。そうなると、さらに山道は樹木に浸食され、 消滅するものです。
春先、雪が消えた頃から大会に向けてハイキングコースの整備を行いました。KFCお得意のいつもの力作業です。崩れた山道を修復したり、道を覆い被さっている 背の低い樹木を伐採したり、行く手を塞いでいた倒木をカットしたりしました。
最近の強風の所為か、倒木の数の多さにはちょっとビックリでした。 ノコギリでは歯が立たない太いものもあり、チェーンソーを持ち込んで処理しました。
その甲斐あって、大会の前には全コースに亘ってストレスなく、安全に、歩いたり、駆けたりできるように仕上がりました。
自然は逞しいもので、世間一般で考えられているほど軟いものではありません。セメントや化学薬品を用いるのなら、いざ知らず、千人程度の人が歩いたり、 駆けたりするくらいでは自然はビクともしません。
我々のように年間通して山に入り、作業している者としては、自然保護原理主義者はもっと“自然なるもの” を勉強して欲しいと思う今日この頃です。何事も“程度もん”ですから。
作業道具を持ってコースを歩いていると、ハイカーから「タケノコ掘るの?」と言われたこともありました。ハイカーは整備されたコースを歩くだけで、 それを整備することはないので、そう映ったのでしょう。
そう言えば、今でこそ大勢のハイカーが訪れるようになった青梅丘陵ハイキングコースも、 「Lafuma青梅高水山トレイルラン」大会を始める15年前は 矢倉台奥の三叉路から先のコースは雑草や低木で覆われ、鬱蒼としており、道が消滅している個所や崩落している部分なども多々ありました。そのため、 榎峠までストレスなく歩ける状態ではありませんでした。実際、その当時は山仕事の人以外、一般ハイカーは見かけることはありませんでした。
しかし、我々がコースを整備し、トレラン大会を開催してからは、一気に大勢のハイカーが訪れるようになりました。
その結果、今では、立派な ハイキングコースになり、昔の鬱蒼とした雰囲気は消え、明るいコースに生まれ変わりました。今、ここを訪れている人は、以前の状態を想像だ にできないでしょう。まさしくKFCの歴史は山の整備にあると言っても過言では・・・。
本大会最大のネックはJR青梅線からのアクセスが良くないことです。大会会場に近い上成木バス停への便数は午前中2本程度しかなく、これでは大会には 使えません。そのため東青梅駅から貸し切りバスを仕立てました。
地元の西東京バス会社で3台を確保することができました。この3台を使って駅と会場の間を ピストン輸送するという計画で、その間の所要時間は約20分です。そして、帰りのルートは駅前に温泉がある河辺駅に変更してもらいました。
未だ第2回大会だと云うのに、有難いことに、600名を超えるトレイルランナーのエントリーがありました。大感謝!
大会当日は300人ほどの参加者が東青梅駅から借り切りバスを利用され、他の人は車でした。バスを利用された人には、往復バス代金として、 通常運賃の半分に相当する400円を3・11東日本大震災への義援金として募金をお願いしました。
募金して下さった皆さん、ありがとうございました。 皆さんの善意ができるだけ生かせるように、現在検討中です。シリーズ第1戦同様、決まり次第、HP上でお知らせします。
スタート地点は「成木の家」の前です。そこには鍛鉄工芸家西田さんが、昨年、東京ヒルクライムNARIKIステージ大会用にプレゼントしてくれた「START」 のモニュメントが設置されており、それをそのまま利用した格好です。
レースは予定通り10:30にスタートし、最初の給水場がある高水山常福院を目指して“なちゃぎり林道”を駆け上がっていきました。この林道は約5q ありますが、この上り坂さえやっつけてしまえば、後は尾根と山頂の繰り返しのトレイルです。
一度に600人もの人が成木の森に入るのは初めての出来事です。 レースの模様は巻末の「レポート・フォト」をご覧下さい。
上位は予想通りの結果で、トップでゴールしたのは栗原孝治選手(Team Lafuma)、2位は飯田健次郎選手(チームサロモン)、3位は宮地藤雄選手(ルイガノ) でした。女子優勝は山口季見子選手(ES関東C)、2位は鶴田雅代選手(小町とナナしゃん)、3位は小野寺利絵選手(南蛮連合)でした。
この度、特筆すべき出来事がありました。それは怪我人が皆無だったということです。ゴール会場にはKFCメンバーの優秀な看護士2名がスタンバイして いました。しかし、消毒薬さえ使う場面ガないほどでした。こんなことはトレラン大会では、初めての出来事です。
約600もの人が山を走って怪我人ゼロというのは奇跡に近い出来事です。
トレイルランはマラソンと違って足元が悪く、 転倒などによる怪我は付き物です。多少の擦り傷はあって当然の競技です。成木の森には怪我をしない何か不思議なパワーがあるのかも知れません。
読売新聞の現地取材が前日と大会当日の二日間に亘ってありました。マラソンと違って、まだまだマイナー競技であるトレイルランが国内最大の発行部数を 誇る読売新聞に取り上げられるというのは珍しいことです。
専門雑誌と違って、新聞は桁違いに多くの読者を持っています。それ故、不特定多数の人に読んでもらえるので、世間にトレイルランを知って もらう大きなチャンスです。
記者の方もランナーで、スタートシーンを撮った後、常磐林道終点から折り返し地点の棒の嶺山頂まで駆けて行かれました。大会の模様は、写真を中心に 6月中旬に「成木の家」活動を絡めて、特集記事として掲載予定と聞いています。
【後記】6月24日発売の読売新聞(多摩版と23区版)の本大会の様子が半ペーの紙面を割いて掲載されました。
写真が大きく載っており、新緑とランナーを撮ったから―写真は素晴らしく、皆さんに好評でした。
また、韓国の済州島で今秋にトレイルラン大会を立ち上げたいということで、韓国観光公社の役人の方が前日の準備風景と大会当日の2日間に亘って視察に 来られました。韓国にはまだトレイルラン大会はないということです。
2日間で、それなりの手応えを得られたようで、満足して帰って行かれました。因みに、 アドバイザーは宮地藤雄選手です。
レース後、その宮地くんからKFCトライアスロンクラブに入りたいとの正式な申し出があり、全員一致で承認されました。KFCへの入会脱会は自由であり、 会費も、小難しい規則もありません。一般常識があって、情熱と体力があればOKです。
大会当日、「成木の家」で地元の人による採れたて野菜や陶器や手芸品などを展示即売する模擬店を開催しました。
売れるかどうか、不安いっぱいの 初の試みでしたが、有難いことに、野菜は全て完売しました。野菜は、旬の竹の子を始め、ジャガイモ、ゴボウ、玉ねぎ、青ネギ、キノコ、山菜のワラビ、 レタス等など、それに、珍しいアイスプラントもありました。竹の子300円で、それ以外は全て100円均一でした。購入して下さった選手の皆さん、 ありがとうございました。
展示前に、ワラビを出展されたおじさんが、「本当に選手の人からおカネをもらっていいの?」と尋ねに来られました。おカネをもらうことに罪悪感の ようなものを感じていらっしゃる様子でした。自分で育てた野菜を直に販売するのが初めてだったのでしょう。今後、成木の家で地域の野菜を持ち寄って 朝市などを開催するのもいいかなぁと考えています。
レースの翌週から成木の森を訪れるハイカーが目に見えて増えました。
それまでは黒山〜岩茸石山の間はほとんどハイカーが訪れないコースでした。 おそらく大会開催でハイキングコースが整備されたことで、コースがはっきりし、明るくなり、歩き易くなったからでは、と思われます。 これもひとつのイベント効果です。
このトレラン効果と「成木の家」活動とで、過疎が進む成木地区が少しでも活性化され、元気になれば、と願っています。成木の家活動を始めて 丸一年が過ぎ、少しは効果が現れてきたような気がしています。
最後に地元の人に聞いたおもしろ話をひとつ。
この時季、成木の森には野生の赤い山ツツジの花が咲き始めています。疲れた時、 この花弁を千切って一枚食べれば、元気回復ということです。
試してみたところ、その味は酸っぱくレモンようで、クエン酸が含まれているようで、疲労が回復するような気がします。 赤い山ツツジの花弁を食べると言うのは考えもしなかったことで、ちょっと抵抗もありますが、物は試し、よろしければトライして下さい。
最後の最後にもう一つ、本大会に限っては、コンパクトカメラを持って走られることをお勧めします。但し、余裕のある人は、ですが・・・。
成木7丁目自治会、里仁会、西東京市役所トレランクラブ
写真提供:小野口健太、池田将、舘岡正俊、西田光男