島情報
北マリアナ諸島(ロタ&テニアン&サイパン)
ローカル情報満載ファイル
■264.KFCトライアスロンクラブの憂鬱(2012.03.05)

近年、マリアナ(サイパン、ロタ、テニアン)でのイベント開催が非常に難しい状況になってきた。最大のネックは不便なアクセスだ。 現地のローカル便だけでなく、日本からの国際線も最悪だ。

現在、日本とサイパンを結ぶ航空会社はデルタ航空1社しかない。だから、マリアナへ行きたければ、デルタ航空を利用するしか術はないのだ。 これでは競争原理が働かず、サイパン便のチケットが割高になるのは当たり前だ。

それに、名古屋発と関空発は、成田発のように年間通して運行している訳ではない。運行していない時期の方が多い。これもイベント開催の大きなネックだ。 幸い、ロタはグアム経由で行くことができるが、サイパンとテニアンはデルタ便を利用する以外に方法はないのが痛い。

イベントとなると、その開催日に合わせて、まとまった数の空席がなければ、開催できない。南の島でのイベントは土曜日開催が一般的だ。そうなると、 必然的に木曜日出発となる。しかし、その日程で十分な空席がないのだ。

サイパン便は機材(ボーイング757)が小さいので、マックス160人しか乗れない。僅かバス2〜3台分だ。正確にはビジネス16席、エコノミー144席だ。 それ故、常に空席が少ない状況にある。

3〜4カ月も前にインターネットでチェックしても、何かの間違いでは、と思うほど空きがないのだ。だから、 イベントの日程を決める場合、先ず、デルタの空き状況をチェックしなければならない。

近年、さらに最悪なのは、募集前に必要と思われる席数を購入しなければならないのだ。これまでのように、先にザックリした席数を予約で押えておいて、 後日、余れば返すという訳にはいかなくなったのだ

例えば、参加人数を80人と予想した場合は、募集開始の前に80人分のチケット代金をデルタへ支払い、席数を確保しなければならない。社員旅行と違い、 募集を前提とするイベントの場合は前もって正確な数字を掴むのは困難だ。

それにしても航空券の先買いは余りにもリスクが高過ぎる。元々、 南の島のイベントは遊びの延長で、利益を追求するようなモノではない。

もし仮に、席の先買いをせずに募集した場合、参加者の皆さんが航空券を入手できないとか、当日にオーバーブッキングいう事態に陥り、結局、来島できなくなる。 現状を鑑みるに、おそらく10人ほどしか来島出来なくなるだろう。これではイベントの開催どころか、混乱を招くだけだ。

こんな状況では、幾ら海が綺麗とか、島の人たちが待っているとか言っても、資金力のない我々にとって、マリアナでのイベント継続は困難だ。


■263.MATSUMURA、去る(2012.03.01)

2月13日、CNMI下院議会がヨウイチ・マツムラ(松村洋一氏)に対し、27年間と云う長きに亘って、 CNMI(Commonwealth of the Northern Mariana Islandsの略で北マリアナ諸島=マリアナのこと、 具体的にはサイパン、ロタ、テニアンの3島を指す)における観光産業への多大な貢献を認め、感謝状を送る採決を行った。

これは2月24日に日本へ引き揚げられたPacific Development Inc.(PDI)社長である松村さんへの感謝の証だ。

では、松村さんとはどんな人物なのだろうか。27年前、近畿日本ツーリストの社員として、サイパンにある近ツリの現地法人PDIの若手社員として赴任された。

そして、その直後、サイパン最大のスポーツイベントであるタガマン・トライアスロンの立ち上げに携われた。因みに、当時、タガマンは日本から300名もの選手が 参加したサイパン最大のスポーツイベントだった。

それを機に旅行社の仕事の範ちゅうを超え、地元の人たち(チャモロ人)との付き合いが始まった。通常、日本からの出向社員は地元の人たちとは それほど密には付き合わないし、付き合わなくても、そこそこの仕事はできるようになっている。そして、3〜4年で日本へ引き揚げて行く。

が、しかし、もう一歩アグレッシブに仕事をするためには地元の人たちとの人脈が不可欠だ。特に、法律=チャモロ人のサイパンではそうだ。そして、 いつしかチャモロ人に最も信頼される日本人となり、且つ、チャモロ人に最も顔が効く日本人となった。

その後、日本とサイパンとの懸け橋として、マリアナ政府や観光局へのアドバイス等々、多くの功績を残された。また、日本人でありながら長きに亘って マリアナ政府観光局の理事をも務められた。現観光局長ペリーも松村さんから多くを学んだ1人だ。今もブラザー(Brother)と呼んで慕っている。 チャモロ人社会でブラザーとは友情を超え、最高の信頼を置く人への呼称だ。

現行の日本からロタ島へ直行チャーター便の仕掛け人も松村さんだ。今では、日本から数百人ものランナーが訪れるようになったサイパンでのフルマラソンを仕掛けたのも松村さんだ。 また、古代の暮らしを再現した「サイパン地球人村」というテーマパークも立ち上げられた。そんな松村さんの功績を称え、サイパン伝説の男として現地の雑誌に 取り上げられたこともある。

また、かつては、松村さんの働きで、民間会社である近ツリが天下のJTB(日本交通公社)を凌ぐ世界で唯一の場所がサイパンだと評される時代を築き上げたことも あった。

その後、1990年前後から始まった日本経済(バブル)の崩壊、その後、9・11勃発、JALサイパン撤退、リーマンショック等々サイパンを取り巻く環境が 大きく変化した。そして、小国サイパンは世界の動きに翻弄され、下降の一途をたどり始めた。

最近では、前代未聞の政府機関がシャットダウンをするまでに至った。復活を向けて苦悩するサイパン。 そんな折、近ツリ本社から松村さんへ帰国命令が下った という次第だ。サイパンにとっては大きなダメージだ。そして、ひとつの時代が終わったと云う感は否めない。


■262.マリアナの憂鬱---電気水道料金の高騰(2012.02.23)

マリアナ(サイパン・ロタ・テニアン)では日本と違って電気と水道をCUC(Commonwealth Utility Corporation)という政府機関が管理運営している。 だから、住民たちは電気料金と水道料金を合算してCUCに支払うことになる。

近年、マリアナでは(電気+水道)料金が異常に高騰している。平均的なローカルの家庭では月額4〜600ドルはかかると云う。 数年前までは100ドルもしなかったという。

例えば、2人家族で、エアコンは使わず、TVを1日3時間だけにし、夜10時には消灯し、水道はサクッとシャワーだけにしても月額100ドル以上は必要 と嘆く。

因みに、サイパンは水道水が飲めないので、炊事用や飲料の水は別途購入している。だから、水道のほとんどはシャワーということになる。 南の島で浴槽に水を張るという習慣はない。暑いのでほとんどの人は1日に朝晩の2回浴びるのが一般的だ。また、マリアナの人たちは朝が早いので 夜は9〜10時に寝る人がほとんどだ。

島民曰く、数年前に比べると、近年のCUC料金は7〜8倍に上がったと嘆く。高騰の原因は政府の財源不足や火力発電用燃料の高騰だ。電気水道は ライフラインの最たるもの、日々の生活に必要不可欠なモノだから住民たちの不満は大きい。

街のレストランやショップなども一部の電気を消したり、エアコンの温度設定を上げたり、営業時間を短縮したりして懸命に対応している。

器の大きなホテルはどうしているのだろう。宿泊客は遠慮なく電気も水も使う。おそらく月に数万ドル(数百万円)はかかっているのは、 と思う。稼働率の高いホテルはまだしも、低いホテルは苦しいだろう。


■261.サイパンにみる3・11からの教訓(2012.02.16)

日本の3・11を受け、昨年後半にはサイパン島の海岸近くの道路脇のあちらこちらに津波からの避難ルートを示すブルーの標識が設置された。 津波の標識と最短の避難ルートを示す矢印とがセットになったものだ。

サイパンの住民のほとんどが海抜の低い海沿い(海抜1〜5m)に住んでいるので 津波は大きな恐怖だ。さらに、ほとんどのホテルや繁華街もビーチに面している。

いざと云う時、観光客や子供たちは右往左往し、最短の避難ルートが分からない。また、土地感のある住民でも津波を目の当たりにするとパニックを起こすものだ。 だから、標識と云う普段からの教育は大切だ。このアイデアは日本も早急に取りいれた方がいい。因みに、この標識はロタやテニアンにも設置されている。

我々の知る限り、サイパンで大きな地震は起きていない。地震の少ない島なのかも知れない。しかし、もし起これば、この島の地形を考えると、 3・11級の巨大津波に襲われたらひとたまりもない。それを理解している彼らは3・11からの多くを学んだようだ。

200kmほど南方の海上に浮かぶグアム島は地震がよく起きる。1902年のグアム大地震では島内のほとんどの家屋やインフラが壊滅している。

また、記憶に新しい所では1993年8月8日に起こったM8.2の大地震だ。その直後にグアムを訪れたが、インフラはぼろぼろで、全てのホテルは半壊や全壊など の大きなダメージを負っていた。中には、8階建てホテルの1階部分が押しつぶされ、7階建てになっていたホテルもあった。

最近では、2010年8月14日にM7.2クラスの地震が起こっている。この状況を考えれば、グアムも、サイパンも、ロタも、テニアンも、 巨大津波に襲われないと云う保証はどこにもない。喉元過ぎれば、熱さを忘れ勝ちだが、普段から充分な備えが必要だ。


■260.サイパンにみる韓国の戦略(2012.02.08)

近年、米国でもヨーロッパでも、さらに日本でも、韓国パワーには目を見張るものがある。日本の得意分野だったテレビや自動車の分野でも、 韓国パワーに押されているのが現状だ。そして、サイパンでも韓国パワーは存在感を示している。

サイパンへの来訪者数に関しても、かつては日本人がダントツだったが、近年では韓国人と大差ない数字になっている。それを反映して、 島内の至る所でハングルが目に付く。また、街中を走る車も韓国車が目立つ。

旅行ひとつをとっても、韓国の戦略を垣間見ることができる。サイパン・ツアーを組む当たって、韓国企業には独自の戦略を持っている。その戦略とは、 韓国の旅行社が韓国国内で集客し、ツアーを組んで、 アシアナ航空などの韓国資本の航空会社を利用してサイパンを訪れる。そして、宿泊はサイパンにある「ワールドリゾート」などの韓国資本のホテルだ。 因みに、彼らは4泊5日が基本パターンだ。

ツアー代金には3度の食事も含まれているので、日本人のように街中のレストランでおカネを使うことはない。さらに、島内観光などのオプショナルツアーも 韓国系の現地オプショナルツアー会社を利用することがほとんどだ。

すなわち、サイパン旅行に関する代金の決済は韓国国内ですべて完結するということだ。その結果、サイパンにはおカネが落ちない、 且つ、サイパンの税収に結び付かないと云う仕組みだ。サイパンとしては上客とは言えないが、韓国側からすれば、自国のおカネを外国へ持ち出さないための 巧妙なシステムだ。

また、投資においても韓国パワーは存在感を示している。最近、パシフィック・リゾート・サイパン(PIC)とパームス・リゾート・サイパン も韓国企業が買収した。パームス・リゾートはかつてJALが所有していたホテルだ。PICも日本資本だった。どちらも部屋数が300前後ある立派なリゾート・ホテルだ。

10年程前はサイパンにあるビーチに面した 大型リゾート・ホテル10棟の全てが日本資本だった。しかし、今は僅かに2〜3棟を残すだけになった。何とも寂しい限りだ。

韓国資本のホテルで働く現地従業員が「かつてのように日本人観光客にたくさん来て欲しい。」と話す。しかし、 「もう、そんな時代はサイパンにやって来ることはないだろう」と答えておいた。


■259.ユニークな集金方法(2011.12.06)

北マリアナ諸島(サイパン、ロタ、テニアン)には、ラッフル・チケットとか、ファンド・レーシーングとか、と呼ばれているユニークなおカネの 集め方がある。

どういうものかというと、例えば、Aさんが病気になり、治療費に急きょ1万ドルが必要になったとする。

その時、Aさんにおカネがない場合、Aさんは自分の 持っているモノ、例えば、1万ドル相当の土地(または、自動車や船舶でも良い)を担保(賞品)として、1枚10ドルの番号付きチケットを大勢の人に 販売するのだ。それを1千枚販売すれば、1万ドルが手に入ると云う寸法だ。

購入者は、当たれば、僅か10ドルで1万ドル相当の土地が手に入ると云う訳だ。確率は1000分の1だ。ハズレても10ドルだからダメージは少ない。 もちろん、1人の人が何枚購入しても構わない。どこか、日本の宝クジに似て、楽しそうだ。

さらに、ラッフル・チケットのおもしろい所は、1万ドルではなく、その半分の5千ドル相当の土地でも、1枚10ドルの番号付きチケットを1千枚、 すなわり、1万ドル分を販売しても良いということだ。すると、Aさんは1万ドルが手に入る。一方、購入者は10ドルの出費だから、5千ドル相当の土地でも 当たれば万々歳だ。誰も文句はない。

但し、このラッフル・チケット、誰もが自由に販売できるかと云うと、そういう訳ではない。ガバメント(政府)に届け出て、正当な理由があると 判断されなくてはならないのだ。

マリアナではOKでも、日本では犯罪になるので、良い子の皆さんはくれぐれも真似をしないように。


■258.期待のローカル・エアー、日本路線に就航(2011.11.24)

先週、サイパンの新聞で久々に明るいビッグニュースが発表された。それは、サイパン経済界の期待を一身に背負って、来年7月1日から日本の東京、 名古屋、大阪の3大都市を結ぶ旅客機の就航計画だ。 機材はボーイング737で、おそらくデイリーで飛ぶのだろう。そうでないと意味がない。

この航空会社はサイパンを本拠地とし、その名称もズバリ「サイパン・エアー」と称す。この会社のオーナーはタン・ホールディングといい、 サイパンでは「フィエスタ・リゾート・サイパン」と「サイパン・グランド・ホテル」を、グアムでは「フィエスタ・リゾート・グアム」を所有している チャイニーズ系の米国財閥だ。

ホテル・ビジネスに進出したのは数年前で、それ以前はサイパンで縫製業を営んでいた。しかし、近年の中国の台頭でサイパンの一大産業だった縫製業は、 数年前に終焉を迎えたのだ。

現在、日本とサイパンの間をデイリーで飛んでいるのはデルタ航空の1社だけで、それも成田発の1路線しかない。しかも、このデルタ便はよく乱れる。 オンタイムで飛ばないことが多々あるから評判が悪い。これを嫌って、日本国内の旅行社はサイパン・ツアーを積極的に売りたがらない。だから、 観光客がグアムへ流れてしまっているのが、最近の状況だ。

大阪と名古屋に関しては、季節的に臨時便は飛ぶが、定期便はない。これでは旅行社も売り難いし、観光客も行き難い。こんな事情が災いして、 サイパンを訪れる日本人は激減している。日本の3大都市から便があった当時は年間80万人くらいの観光客があったが、近年では20万人に満たない。

過去、サイパン自身で膨大なコストを要する航空会社を設立しようとはしなかった。サイパンへのアクセスは既存の航空会社にお任せの状態が ずっと続いていた。しかし、 年を追うごとに日本〜サイパンの航空路線状況は悪化の一途を辿った。そんな状況下、もう後がなくなり、自分たちでやるしかないと決断したのだろう。

ここまで経済がひっ迫した今、タン・ホールディング1社だけでなく、サイパン政府も、サイパンの観光産業も、我々観光客も、皆でサイパン・エアーを 応援しなければならない。 もし、これがこけると、サイパンの将来は本当に暗いものになってしまう。今後、我々がサイパンへ行く時はサイパン・エアーを利用したいと考えている。

また、サイパン〜ロタ〜グアム間に関しても、来年の1月15日から「アークティック・サークル・エアー」という名称の航空会社が新規参入を計画している。 この会社もサイパンを本拠地としている。現在、就航中の「フリーダム・エアー」がガタガタの今、実現すれば、ロタにとっては久々の朗報だ。


■257.かつてない厳しい環境のロタ島(2011.08.01)

2001年に起きた9・11を境にロタ島(本島であるサイパン島も含む)を取り巻く環境は大きく変わり始めた。

それ以前は、マリアナ諸島(サイパン・ロタ・テニアンを指す)の本島であるサイパン島へは国際線が東京、大阪、名古屋の各主要都市からデイリーで運行されていた。そして、 サイパン〜ロタ間もPIA(パシフィックアイランドエアー)とフリーダムエアーという現地航空会社2社によって、デイリーで計4便が運行されていた。 その結果、ロタへも日本人観光客が日々こそこそ訪れ、ロタリゾート、ロタホテル、ココナッツビレッジと3つのホテルが、充分とは言えないまでも、 何とか営業を続けて行ける比較的安定した島だった。

しかし、宗主国アメリカが対テロ報復戦争と称し、アフガン侵攻とイラク戦争を始めた。その結果、アメリカに戦費がかさみ財政難に陥ると、 マリアナ(サイパン)政府への経済援助も減りはじめた。さらに、各航空会社も燃料高騰やテロ防止対策費用等々で経営難に陥った。そして、2005年に 慢性赤字を抱えていた日本航空が利益の上がらないサイパン路線から撤退してしまった。それを受けて日本人観光客が激減した。さらに、中国の台頭によって、 サイパンの主要産業であった縫製業が崩壊してしまったのも財政赤字に拍車をかけることとなった。

9・11から10年経った現在では、デルタ航空1社が成田〜サイパン間を運行しているだけと云う寂しい状況にある。当然、サイパンへの観光客数は 10年前の年間約80万人から約20万人へと激減している。本島であるサイパンへの観光客が減少するということは、ロタへの観光客も減るということだ。

この厳しい状況下、ロタ島内にある3つのホテルの内、ロタホテルとココナッツビレッジの2つが今年に入って事実上稼働していない。今後、稼働するのか、 しないのか、先が見えないのが現状だ。比較的体力のあるロタリゾートだけが、唯一昨年と同様に営業を続けている状況にある。アクセスに関しては、 サイパンとグアムから現地航空会社フリーダムエアー1社だけがデイリーで飛んでおり、ケープエアーは週に1便だけという、これまた厳しい状況が続いている。

大雑把ではあるが、以上のような理由で、ロタ島を取り巻く環境は下降の一途を辿り続けている。ロタ島の経済は、我々が知っている限り、今が一番良くない。 島の財政は危機的状況にあると感じている。ロタ島民達も口を揃えて「今が一番悪い状況だ。」と話す。それでも島民たちは相変わらず明るく、島の自然は どこの島よりも素晴らしいものがある。それらが唯一の救いだ。


■256.3・11とマリアナ(2011.05.03)

3月11日の東日本大震災発生直後、国内旅行だけでなく、海外旅行もほとんどが一斉にキャンセルされた。マリアナ(北マリアナ諸島とグアム島を指す) も例外ではなかった。3・11を境に南の島へも日本人観光客がぱったりと行かなくなったのだ。

マリアナの人々もCNNを通して東日本大震災の発生は知っていた。しかし、外国人である彼らの感覚では、 日本の一地方に起こった災害と日本人観光客の一斉の大量キャンセルとが結び付かなかったようだ。皆が「なぜ?」という疑問を持っていた。

そこで、地震や津波の規模、それに原発事故や成田空港の状況、日本人の心境(自粛)などを説明してやるとようやく理解した。 でもほとんどの人々は未だに理解できていない。しょせん外国の出来事なのだ。

グアムの一流ホテルでも、この状態が続くと長くは持たないと嘆いていた。サイパンでも同じことだ。体力ない企業は淘汰されてしまう。 約2か月経った今でも、 島を訪れる日本人観光客は元に戻っていない。今年のゴールデンウィークの成田空港の利用者数は昨年の50%落ちだという。深刻な数字だ。

さらに、原発事故の長期化までもがマリアナの観光産業に追い打ちをかけている。これにはちょっとびっくりだが、フクシマからサイパンへ放射能が 飛んできているとして、 韓国、中国、ロシアからの観光客も激減しているという。風評被害も甚だしい。サイパンはフクシマから3000kmも離れているのだ。

日本で起こった地震がこれほどまでにマリアナ諸島の経済に影響を与えるとは・・・である。2001年に起こった9・11直後に受けたダメージと どこか似ているように思える。

9・11の不幸から始まり、その後10年間の長きに亘ってマリアナの経済は「これでもか、これでもか」というほど不幸に見舞われ、下がり続けている。 そんな中、昨日、マリアナをここまで追い込むきっかけを作った張本人ビンラディンを殺害したとオバマ大統領が発表した。 これを機にマリアナ経済も上昇に転じて欲しいと切に願う。


■255.日本と酷似のマリアナ事情(2011.02.22)

今年に入ってマリアナ関連のレポートを全く書いていない。かと言って、マリアナの近況をウォッチしていない訳でない。残念なことに、外国人(日本人)へ 紹介できるようなネタがないのだ。

サイパンもロタもテニアンも皆一様に、極度の財政難から生じる解決不可能な諸問題、政府内のゴタゴタ、米国連邦政府との連邦化に関するゴタゴタ問題、 宙ぶらりんの外国人労働者の扱い、知事や市長のゴシップ、減便による日本からのアクセスの悪さ、ガソリンなど燃料費や電気代や水道代の高騰、 公務員の人件費のカット問題、医療や教育の質の低下、レストランや大型店舗の閉鎖、日本人観光客の減少から来る観光産業の衰退等々・・・ネガティブなニュースばがり。

こんなものを書いても、観光客である我々外国人には何の興味も関係もないことだ。さらに、その通りに書くと、現地関係者から「イメージダウンになるから削除して」 とクレームが入るのが落ちだ。

それにしても、政治のゴタゴタや極度の財政難等々は昨今の日本と境遇が非常によく似ているのがおもしろい。 かつて日本経済が元気だった頃はマリアナ経済も元気だった。これから分かるように、 マリアナは米国領であっても日本の経済圏に属しているということを改めて認識する。マリアナ経済の復活には日本経済の復活が必要なのかもしれない。

かつて在任したある観光局長(現観光局長でない)が「日本からの観光客が減っても、マリアナには膨張を続ける中国マーケットがあるから問題ない。」 と強気発言をしていたが・・・。


■254.セプテンバー・イレブンとサイパン経済(2010.12.30)

先週のクリスマスにマリアナ政府観光局から2010年度の北マリアナ諸島への観光者数は約37万人だったと発表された。米国の会計年度は日本と違って 10月1日から9月30日までであるため、毎年この時期の発表となる。

この数字は10年前と比べたら半減しており、非常に深刻な状況に陥っている。当然、税収が減り、その結果、今、 北マリアナ政府はかつて経験した事がないほど税収不足で苦しんでいる。

現在の税収不足の原因は2001年のセプテンバー・イレブン(9・11NY同時多発テロ)だ。アルカイダによる旅客機を使った衝撃的な テロアタックは西側の世界経済を大きく後退させた。その中でも、航空会社は計り知れないほどのダメージを受けた。

その2ヶ月経った11月中旬でさえ、成田発のサイパン行きのJALジャンボ機(500人乗り)にはロタブルートライアスロンへの参加選手が 100名ほど乗っているだけ と云う 悲惨な有様だった。そして、現在、世界中の空港で行われている荷物や乗客に対する厳しいセキュリティ・チェックなどもセプテンバー・イレブンの後遺症だ。

これらの世界の航空会社の受けたダメージは大きく、太平洋上の米粒サイパン島も他人事ではなかった。具体的には、2005年にJALがサイパン路線 から撤退した。これもセプテンバー・イレブンが原因で経営が急激に悪化してしまったからだ。そして、日本からの観光客は激減した。

さらに、ここ数年間でサイパンの主要産業だった縫製業が衰退してしまった。それまでは縫製業と観光業は重要な2大財源だった。 一時期は米国本土で販売されるTシャツのほとんどがサイパンで生産されていたくらいだった。

しかし、2001年12月、中国のWTO(世界貿易機関)への参加によって、 その座を徐々に中国に奪われてしまった。そして、その中国がこの10年間で急激な経済成長できたのも、 西側経済圏に属していないBRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国)の台頭も、アメリカの衰退も、全てがセプテンバー・イレブンに起因している。

オサマ・ビンラディンという一人のサウジアラビア人によって世界のパワーバランスがドラマチックに変えられ、その渦の中で北マリアナ諸島も 沈没していったのだ。

10年前と比較して縫製業の衰退で50%の税収がなくなり、さらに、もう一方の柱だった観光業が 半減することで25%の財源が消えたことになる。

すなわち、単純計算だが、10年前の25%の税収で国(島)を運営していかねばならない状況にある。しかし、公務員の数は 10年間と同じだから財源不足が深刻なのは当然だ。次の10年後、北マリアナ諸島はどうなっているのだろうか。


■253.サイパンと北朝鮮(2010.11.28)

サイパンと北朝鮮とは余り関係がないように思えるが、実はそうではない。北の動向がサイパン経済に少なからず影響を与えているのが現状だ。

例えば、3月に起きた北の魚雷による韓国哨戒船撃沈事件だ。この直後は韓国からの観光客が激減し、サイパン観光産業はダメージを受けた。 また、今月24日に北が起こした韓国延坪(ヨンピョン)島への砲撃事件だ。これも韓国人観光客は激減することは確実だ。

未だに北との戦争が完全に終結(休戦状態にある)していない韓国では国民に対し兵役義務や予備役制度を敷いている。だから、 韓国国民は有事の際には最優先で戦場へ赴かねばならない。今のように、その可能性が限りなく高い時期に外国へ遊び行くことなど、 もっての外なのである。仮に、外国に住んでいても予備役の招集がかかれば、即刻、帰国せねばならない義務を負っている。

だから、朝鮮半島がキナ臭くなると、サイパンの観光産業はダメージを受けるのである。早く朝鮮半島に平和が訪れて欲しいものだが、 そのためには北朝鮮の金政権が崩壊するか、或いは、後ろ盾(食料や燃料を供給している)の中国共産党一党独裁政権が崩壊するまでは 平和が訪れることはないだろう。可哀そうだが、今後もサイパンは北の動向に翻弄される運命にある。


■252.サイパンを舞台にした映画「太平洋の奇跡―フォックスを呼ばれた男―」(2010.10.22)

先の太平洋戦争で、当時日本統治領だったサイパン島は米軍の猛烈な空爆を受け、米軍の上陸を許し、約4万人の日本軍はほぼ全滅した。 当時の最新兵器を駆使する米軍の前に、銃剣を持って突撃するだけの日本兵では到底勝ち目はない。1944年7月の出来事だ。

ところがこの時、最新兵器を駆使する約5万の米軍の攻撃をかいくぐり512日間の長きにわたってゲリラ戦を挑み続け、米軍を悩まし続けた男がいた。 米軍に畏怖の念を込めて“フォックス”と呼ばれた陸軍大尉大場栄という人物だ。彼は生き残り兵50人ほどを組織し、タポチョ山の地形を利用して、 最新兵器を駆使する5万人の米兵相手に彼自身の戦争を始めたのだ。

結局、広島と長崎に原爆を落とされ、この戦争は終戦を迎えることになった。そして、日本軍部からの「降伏せよ」命令を受け、 彼は自ら米軍に武器を手渡し降伏した。その後、しばらく捕虜となるが、間もなく帰国、ビジネス界で活躍され、平成4年に亡くなられたそうだ。

この話は実際に大場さんと戦った経験を持つ元米軍兵士のドン・ジョーンズ氏の実録小説「OBA, THE LAST SAMURAI」を映画化したもの。 戦後、ドン・ジョーンズ氏は日本の愛知県に住む大場さんを訪ねて、彼の許可を得て、この小説を書いたという。

日本人でありながら、こんな骨のある日本人がいて、こんな凄い歴史がサイパン島であったことなど全く知らなかった。歴史に埋もれた貴重な真実だ。

2011年2月東映系で公開される。監督平山秀行、主演竹野内豊、タイトル「太平洋の奇跡―フォックスを呼ばれた男―」


■251.前代未聞のシャットダウン(政府機能停止)(2010.10.08)

北マリアナ諸島(略してマリアナとも云う)は日本と違って10月1日から新年度が始まる。アメリカと同じだ。

だから9月末には新年度予算案を議会で通過させねばならない。ところが財政難が原因で議会(上院と下院)の合意が得られず 新年度予算が執行できなかった。その結果、10月1日(金)に政府機能が停止(shutdown)したのだ。

しかし、ここに至るまでに公務員の給料の未払いなどの伏線があったので、島民たちはそれほど驚いてはいない。漠然と、根拠なく、 今度も何とがなるだろうとのんびり構えている人が多い。

実際には、警察、病院などのライフラインを除いて、金曜日だと云うのに行政サービスが全てストップしてしまった。曲がりなりにも マリアナはUSテリトリーである。空港には星条旗が掲げられており、アフリカの小国ではない。信じられない事態だ。これはマリアナ史上、 前代未聞の出来事だ。

直接の原因は、連邦化に伴う憲法改正により前年度の財政赤字を 引きずった状態での新年度予算が執行できなくなったからだ。その規定に引っ掛かったということだ。

しかし、根本の原因は、長年に亘る財政赤字だ。縫製業の衰退や観光客の激減にもよるが、最も深刻なのは仕事量を遥かに超えた公務員の多さにある。 すなわち、膨大な役人の人件費が国家財源を喰いつぶしているのだ。

この辺は全く日本と同じだ。日本の場合は赤字国債を発行して急場をしのいでいるいうだけの違いだ。マリアナ政府が発行する国債(公債)など 誰も購入してはくれないからその手が使えない。他にも、役人が国家財源を喰いつぶした国にギリシャがある。いわゆる、ヨーロッパ全土に衝撃を与えた “ギリシャショック”だ。

では、なぜ、それほど多くの公務員を採用するのかというと、それはマリアナの政治システムに原因がある。最高権力者である知事を選ぶ選挙は、 投票率約95%が示すように島民たちが熱狂する4年に一度のスーパーイベントだ。勝てば強大な権力を手に入れ、負ければ借金以外何も残らない という“All or Nothing”方式で行われる。

だから勝つためには、なりふり構わず有権者に票と引き換えにポジション(職)を約束するのである。どこの国でも多少はあるが、 マリアナの場合、それが極端に、堂々と行われているというのが問題なのである。

これは現在のフィッテル知事だけでなく、過去ずっと続けられてきたマリアナでの悪しき習わしだ。それが今になって政府機能停止と云う 前代未聞の出来事を招いてしまったのだ。

親マリアナ派のKFCとしては一刻も早く復活してほしいと願うが、現時点では一発逆転の好材料が見当たらない。マリアナを救えるのは 優秀なリーダーの出現以外にはないように思われる。

【後記】新年度10月1日に遅れること2週間ほどで予算が議会を通過し、何とか執行されました。今後、公務員の給料は削減されることになりますが、 これで政府機能は通常に戻りました。ヤレヤレです。



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