友好都市実現に向けて
for the conclusion of a friendship city
2024年2月、サイパン島にあるマリアナ政府観光局で同年5月に東京都が主催する世界5大陸45都市の首長が出席する国際イベント「SUSHI TECH
TOKYO 2024」に北マリアナ政府のアーノルド・パラシアス知事を送り出すことに関し、打ち合わせをしていました。
その席上で、長年温め続けてきた案を思い切って切り出した「青梅市とサイパン市が姉妹都市になったらどうか」を観光局長クリスに提案してみました。すると「ぜひ、やりたい」と即答。青梅市を訪問したことはないが、「30年来のサイパンの友人であるKFCトライアスロンクラブのホームタウンである青梅市となら、ぜひ、やりたい」ということでした。締結できれば、過去30年間の我々市民レベルでの友好関係が両市レベルの友好関係に格上げされ、それは無理なく自然の流れと感じます。
帰国後、直ちに大勢待青梅市長に打診しました。大勢待市長はランナーで、青梅市が誇る「青梅マラソン」だけでなく、「青梅高水国際トレイルラン」や「みたけ山登山競争」等々、我々KFCの大会にも参加されています。
案の定、大勢待市長からは前向きな返事が返ってきました。それを受け、サイパン側へ連絡し、前へ進めることで一致しました。締結できれば、青梅市にとっても3つの大きなメリットが期待できると感じています。因みに、サイパンの治安は日本よりもっずっと良好です。
1つ目は、語学交流です。サイパン島は日本に最も近い米国であるということ。すなわち、英語圏であるということです。3時間で行け、時差も1時間という手軽さ、航空券も往復で数万円というリーズナブルな価格です。因みに、2024年12月5日出発の往復航空券は53,000円でした。
サイパンには小中高校だけでなくカレッジもあります。青梅市民にとって、語学交流には最適の地と思います。特に21世紀を生き抜く子供たちにはネイティブな英語力は必須と感じています。現在では、リモートという便利なツールで手軽に子供から大人まで語学交流ができます。
我々はサイパン島やその他の南の島々(英語圏)で、過去に110本ほどのスポーツイベントを開催してきました。その経験から日本人の英語力の貧弱さを痛感しました。同じ東洋人でも韓国人や中国人は英語が非常に堪能です。原因は、かつて日本が経済大国だったが故に日本人は日常的に外国人との交流を必要としなかったため、と感じています。
2つ目は、スポーツ交流です。我々がすでに実施しているトライアスロン、マラソン、OWS、サイクルイベント等々を通した交流です。美しいビーチ沿いの道路を走るフルディスタンス(42.195km)の「Saipan
Marathon」や誰もが参加できるサイパン島1周回100kmのサイクルロードレース「Hell of Marianas」等々、スポーツは盛んです。それら全てが米国流の大会運営ですから、レース後のアワードパーティ会場では全参加者にご馳走が振舞われ、入賞者にはそれなりの額の賞金が授与されます。特に、自転車文化後進国の日本においては「Hell
of Marianas」のような一般公道レースの開催は難しいものがあります。
今年12月7日開催の「Hell of Marianas2024」には、我々KFCから青梅七中自転車部卒業生を始めとして10名ほどの派遣を決めています。また、海のない青梅市民にとっては、常夏の美しい海を泳ぐトライアスロンやOWSも魅力的です。因みに、12月7日開催の「Hell
of Marianas」には青梅市サイクリング協会会長松永真理さんも同行されます。
加えて、サイパンはサッカーが盛んです。人工芝の立派なサッカーコート施設があります。サッカー交流も安近短の立地条件を持つサイパンなら大人だけでなく子供にも親善試合や現地合宿等々に最適の場所と思います。
3つ目は、日本とサイパンとの特別な関係を直に見聞でき、教科書にはない貴重な日本の近代史を学ぶことができます。現在、ほとんどの日本人はかつてサイパン島が日本の統治領(領土)だったことを知りません。1914年から太平洋戦争終戦までの約30年間は日本統治領でした。近隣の島々(テニアン島・ロタ島)を合わせると3万人もの日本人が移り住み日本人街を作り、サトウキビ栽培等々に従事し、サイパンのインフラ整備等々の近代化に寄与しました。現在でも、日本統治時代の名残を地名、人名、言葉等々に多く見ることができます。例えば、現在のサイパン島の幹線道路のほとんどはかつての日本の南洋興発(株)がサトウキビを運んだ鉄道跡地です。そして、終戦末期には日本人と共に現地サイパンの人も悲惨な体験をしています。現在では少なくなりましたが、年配の人のほとんどは流暢な日本語を話しました。そんな関係で日本人に親近感を持つ人々が多いのも好材料です。
また、戦後60年の節目に当たる2005年6月27日には天皇陛下が慰霊のためサイパン島を訪問されています。この訪問は天皇陛下の強い希望で実現したことで有名です。
また、近隣のテニアン島は太平洋戦争末期にB29爆撃機が広島と長崎に向けて原爆を搭載して飛び立ったことで世界的に有名な島です。しかし、日本の教育では、なぜか、この部分は省かれています。今なお、テニアン島北部は米軍の管理下にあり、当時の滑走路が4本とも残されています。我々はかつてその滑走路を借り、そこをバイクコースの一部に組み込んだトライアスロン大会を開催したことがあります。
もう一つのロタ島では、我々が1994年からトライアスロン大会開催を通して親密な交流を続けており、2018年にはロタ政庁と協力してジャングル奥地で100年前の日本統治時代に日本人が栽培していたコーヒー農園跡地を発見しました。敗戦と同時に放置され、人知れず自然に世代交代を繰り返し、野生化して脈々と生き続けていた稀有なコーヒーです。現在はUCC上島珈琲(株)の協力を得て、先人住田多次郎が植えたコーヒーのバトンを受け継ぎ、ロタ島の経済復興をお手伝いしています。昨年8月2日付けと16日付けの産経新聞にこのストーリーが当時の歴史的背景と共に詳しく掲載されました。因みに、当時、このコーヒー農園を造ったのは(株)エム・シー・フーズの前身である南洋珈琲(株)で、その創業者が住田多次郎です。
さて、友好・姉妹都市の発案から2か月後の4月23日、マリアナ政府観光局長クリスが青梅市役所を訪問し、友好・姉妹都市締結を見据え、サイパン市長の代理として大勢待市長に面会しました。観光立国の北マリアナ政府では、観光局は外務省と経済産業省を合わせたような最重要の部署です。さしずめ観光局長のクリスは大臣に当たります。
因みに、北マリアナ政府はサイパン島、テニアン島、ロタ島、それに北部諸島の4つの地方行政圏から成り、各々1人の市長がいます。その上に知事がいて、キャピタル機能はサイパン島にあります。米国領ですから政治システムは米国流そのものです。人口は現在約5万人です。
現在、青梅市では60年前にドイツのボッパルト市と姉妹都市関係を結んでいます。複数の友好・姉妹都市を締結している都市は多くあり、例えば、八王子市は4市と締結しており、民族文化の多様性の面からも多い方が良いと思います。相手方のサイパン市は現在2市と結んでいます。また、近年、上下関係をイメージする姉妹都市よりも友好都市関係を結ぶ方が世界の主流になっています。青梅市はこれまでの欧州(ボッパルト)に加え、米国(サイパン)にも友好・姉妹都市を持つのは、青梅市民とって大きな価値があると思います。
今後の予定として、11月にサイパン市のカマチョ市長が大勢待市長に会うために青梅市を訪問される予定です。この時に両市長の意思を確認し、友好都市締結後、大勢待市長がサイパン島を訪問され、その後に交流事業が具体的に始まると思います。
2024/10/23 KFC記
後日、(一社)青梅市スポーツ協会ホームページのトピックス(11月10日付け)に【夢が広がる!!青梅市=サイパン市友好都市実現へ】というタイトルで応援メッセージが掲載されました。